研究部会メーリングリスト通信 2020年6月号

研究部会メーリングリスト通信 2020年6月号

 

<生物技術者が見た風景 〜 金沢城公園のモリアオガエル産卵状況>

 昨年の6月に、ろくに情報を仕入れずに金沢城公園のモリアオガエル産卵を見に行って、最大の産卵場所をピーク時に見に行かなかった(かもしれない)という体たらくをお話ししたかと思います。今年はそのリベンジマッチ、ということで5月下旬から1か月にわたり6回の現地調査(という名の見物)を敢行しました。この場所、自宅から歩いて30分なので散歩がてらに行けるのです。

 昨年、最初から産卵状況を確認できなかった場所は二の丸内堀と新丸湿生園の2箇所です。

 

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二の丸内堀の眺め

この写真は二の丸内堀の全景を見たもの。左側の石垣の上が二の丸で観光客受けしそうな迫力ある櫓や門(復元建築です)が並んでいます。ここでは石垣の水辺際に沿ってたくさんの卵隗が見られました。下の写真のような感じ。

 

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二の丸内堀の石垣に産み付けられた卵隗

堀の左右には堀の水面上に枝を伸ばす樹木が並んでいて、いかにもカエルが産みそうな枝ぶりですが、何故か右側に植えられた数本のサクラに数個があったのみでした。

 

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二の丸と新丸湿生園を望む

この写真は河北門というところから新丸湿生園を見下ろしたものです。左側に見える櫓の下に二の丸内堀があります。写真中央の池のほとりにこんもりした照葉樹林がありますが、この樹林の下部に卵隗が産みつけられていました。見た通り、先ほどの二の丸内堀とこの樹林地は非常に近い距離にあります。卵隗を数えた結果は次のコーナーで。

 

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本丸の森の卵隗ツリー

最後に、本丸の森に中に設けられた産卵池です。今年は梅雨入り直後の大雨が上がった次の日、天候は晴天というこれ以上ないタイミングとコンディションで行ってみました。そうしたら、池周りの木が見事な「卵隗ツリー」となっておりました。暗い森の中で浮き上がるように真っ白な卵隗が鈴なりになっていて、とっても不気味…いや美しい。産卵直後の卵隗ってこんなに白いんですねー。森の中を散歩する観光客が結構いたんですが、どなたも関心なさげに通過していく…。みんな、少しは感動してちょうだいよぉ。

 

<今月のデータ 〜 2020年のモリアオガエル卵隗確認結果>

 5月21日から6月21日の1か月に渡り、計6回の計数調査を行った結果は表の通りとなりました。

 

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 昨年はピーク時で3箇所の合計が30個でしたので、今年はほぼ倍になりましたね。梅雨入り直後の大雨(雷付き)でスイッチが入ったみたいです。二の丸内堀では、5月21日の調査の時点で石垣の中からカエルの声が聞こえてました。おっちょこちょいが少しはいたものの、準備万端で待ってたという感じでしょうか。ところで、6回調査したところでは3箇所の産卵地に来るカエルはそれぞれ異なるグループ…のような印象がしました。図にしてみるとこんな感じです。

 

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 まあ、1,2年見ただけで推測できるものではありませんが、本丸の森グループと二の丸内堀グループは完全に独立している?新丸湿生園グループは二の丸内堀グループからから分かれた?などといろいろ考えを巡らせてます。また、二の丸内堀と新丸湿生園の周辺にはカエルが好きそうなまとまった樹林地が少ないので、越冬場所も含めて石垣の隙間空間を周年の生息場所としているのかも…などと想像してみました。うん、楽しかったので来年もやりましょう。

 

<いきもの写真館No.109 キビタキ

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 全国的に5月はバードウォッチングが楽しい季節です。渡ってくる途中の夏鳥を街の近くでも見かけ、営巣する森では営巣場所を探して動き回り盛んにさえずるため、カメラで捉えられるチャンスも大幅に増えます。写真のキビタキは5月に金沢市内の自然公園で撮ったものですが、普段なら暗い森の中から声は聞こえるのに写真をものにするのがとっても難しい鳥です。車の中でくつろいでいたら目の前の電線にいきなりとまったので、車のガラスごしに撮ってみました。図鑑なんかで見る写真は背中の黒と腹のオレンジのコントラストを狙ってますが、このアングルはわりと珍しい…かな。金沢市内にはあちこちに自然公園がありますが、海岸沿いにある公園なんか渡りの時期になると関東では絶対に見られそうもない鳥が何種類も見られて、とても楽しいです。

 

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邑井 良守