研究部会メーリングリスト通信 2020年7月号

研究部会メーリングリスト通信 2020年7月号

 

<生物技術者のための用語集 〜 侵略的外来種

環境省の定義によれば、「人間の活動によって本来生息していない地域に入ってきた、その地域の生態系や人間活動に被害を及ぼすおそれのある生物」のこと。海外からの侵入のみならず、日本国内での地域間の移動侵入も対象になる。日本政府は2015年に侵略的外来種429種類を生態系被害防止外来種リストとして公表している。ちなみに、外来生物法で指定される特定外来生物は海外起源の外来種で、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定されている。

この言葉が初めてポピュラーになったのは、2003年に日本生態学会が「日本の侵略的外来種ワースト100」を選定したことによる。これは、2000年に国際自然保護連合によって「世界の侵略的外来種ワースト100」が公開されたことを受けたものである。

 

生物技術者のひとりごと:

 「世界の侵略的外来種ワースト100」を見るとチガヤやクズ、イタドリ、ワカメなど、日本でおなじみの植物が含まれています。どれも日本人が食用や建材として利用している植物なのがまた面白いですね。動物だとヒトスジシマカマイマイガが入ってるんですが、これはまあ納得?かな。「日本の侵略的外来種ワースト100」の方はアルゼンチンアリやセアカゴケグモは入ってますが、ヒアリツマアカスズメバチはなし。20年もたってないのに、今選定したらだいぶ入れ替わりが出てくるような気がします。そしてこれからも。どちらもネットからPDFでリストを落とせます。

 

<今月のデータ 〜 虫と光と生物技術者 その1>

 生物技術者たる者は、一度はライトトラップで虫の調査をしたことがあるのではないでしょうか。私などは環境調査でやったことがあるのはもちろん、商売(消毒屋)でもさんざんやってます。企業にオリジナルのライトトラップまで売っている関係上、ライトトラップについてはどんな形が一番捕れるか実験したりもしています。

それで一つ気になることがあるのですが、皆さんのライトトラップではどんな明かりを使っているのでしょうか? 今から14年前、2006年にこのことにつき調査屋の皆さんにアンケートをとったことがあります。その結果は表のようになりました。

 

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 皆さん、20Wのブラックライトをメインに使ってますね。あれっ、ブラックライトと捕虫用蛍光灯は違うの…? はい、メーカーに言わせると商品が違います。次の表をご覧ください。用途によって品番が違う商品になっているんですね。

 

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 でもこれ、商品名は違いますが捕虫性能としてはほぼ同じです。値段がずいぶん違いますけどね。それと、水銀灯はよく捕まるみたいという意見が出てますが、これも実験的に確かめられています。ただ、水銀灯は現場では使いにくいんですよねー。

 このアンケートをとったのは14年前で、LEDの普及など照明をめぐる状況はそれからずいぶんと変わってきました。また、様々な実験や調査をやってきた手前、虫が光に集まるメカニズムについてもいろいろと分かってきたことがあります。今回はここまでですが、虫と光と生物技術の関係をテーマに、これからもシリーズものとして何題か出していこうかと思います。たぶん不定期に、ですけど。

 

<いきもの写真館No.110 アマサギ

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 むかし、「サギ山」はとても大事にされていました。天然記念物として指定されていたところもあります。サギ類は水辺に近く人が近づかない、樹木(というか藪)が密生した場所で集団繁殖します。最近はそのような条件に合った規模の大きい場所は少なくなって、小規模なコロニー(集団繁殖地)が各地に分散して見られるようになりました。

 平野部で人が比較的近づかない場所、といえば代表的なところで大きな河川敷があります。特に雑木の藪が発達した中州は、コロニーを形成するのに恰好の場所といえるでしょう。写真は金沢市内を流れる犀川の中州に作られたコロニーで見かけたアマサギです。上半身が黄色になった夏羽の姿ってきれいですねー。ここではアマサギの他にアオサギコサギチュウサギゴイサギもいて、小規模ながらずいぶんとカラフルでしたよ。

 

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邑井 良守