生物技術者連絡会メーリングリスト通信 2021年3月号
<生物技術者が見た風景 〜 ホクリクサンショウウオの発見場所>
ホクリクサンショウウオというのは、1971年に石川県羽咋市で初めて発見された新種のサンショウウオです。最初は既知種のアベサンショウウオだと思われていましたが、1984年になって別種であることがわかりました。1989年には環境庁が絶滅危惧種に指定、現在はIUCNレッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。最初に発見された場所が羽咋市立越路野(こしじの)小学校の側溝だということで、今年その場所に行ってみました。
金沢からJR七尾線の電車に乗って約1時間、千路駅というローカルな駅で降ります。発見場所はそこから20分ほど歩いたところにあります。今は小学校は廃校となり、跡地だけが残っています。
学校跡と示された横の坂を上がっていくと更地となった跡地が広がり、後背の林縁部のところが当時の発見場所です。
近づいてみると発見場所を示す案内板があり、元々あったと思われる雨水溝と並行して手掘りの溝が掘られています。
後背の山林から絶えず流出する地下水により、溝にはきれいな水が一定量、常に緩く流れるようになっています。
行ったのは3月初め。関東でトウキョウサンショウウオ、東北でクロサンショウウオを追いかけた経験からこの時期に行けば姿は無理でも卵塊には会えるかな、と期待しながら行ってみました。水が流れる溝は日当たりがよく、藻が生えていて見つかるかなあと目を皿にして探すと…
あった!ありましたよ、卵塊が。…いや、しかしこれ、トウキョウサンショウウオの卵塊と形は同じだけど、それよりずっと小さいですね。卵嚢に入っている卵の数もずっと少ないような気がします。卵塊の状態から見て産卵後少し期日がたっているようですが、そうすると産卵期は2月? 普通、その時期には雪が積もってますから、産卵の現場を狙うのはちょっときついよなー、などと考えてしまいました。
現在分かっている生息地は能登半島と富山県の一部です。実際に現地に行ってみると、このサンショウウオは平野部に接する自然林の際に生じた水たまりを主な産卵場所としている模様。ちょっと山に入ると多数派のクロサンショウウオの世界になりますから、生息適地といえる場所はそう多くないように見えます。確かに先行きが心配な状況ですね。
<いきもの写真館No.118 キジ>
春になると生きものたちの繁殖活動があちこちで見られるようになります。今回は金沢市内の河川敷を歩いて出会った、2種類の鳥の姿をご紹介します。まずはキジから。
キジは一夫多妻で、オスは多くのメスを囲うために広いテリトリーを確保しなくてはなりません。3月になると河川敷のあちこちで、オスによるテリトリー争いが勃発します。その決定的な光景を2枚の写真でご覧ください。
もちろん、「ケーン、ケーン、バタバタッ」という、あれもさかんにやってましたよ。
<いきもの写真館No.119 トビ>
今回は2連発。トビは猛禽類ながら大きな都市でもよく見るので「都市鳥か?」と突っ込みたくなる鳥ですが、不思議なことに営巣場所を見つけることが難しい。たぶんハシブトガラスみたいな大きさで、大きな木の股あたりに作ってるんだろうなー、くらいには思ってましたが「これがトビの巣だ」と言えるものに出会ったことはかつてありませんでした。それで、今回初めてトビの巣と確認できたのがこれ。確かにトビくんが抱卵してますよね。形といい、作った位置といい、いかにも猛禽の巣という感じでちょっとホッとしました。カラスの巣みたいにビニールのような巣材をだらしなく組み上げて作ってるんじゃないか、ヤツのことだから…なーんて思ってたんです。
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yoshimori.murai@gmail.com 邑井良守(ムライ ヨシモリ)