生物技術者連絡会通信 2026年8月号
<生物技術者のための用語集~防除推進外来種と生態系被害防止外来種>
先々月、環境省と農林水産省が生態系被害防止外来種リストの対象を従来の「ノネコ」から「イエネコ」全体へ拡大し、「防除推進外来種」に位置づける方向で調整していることが報道されました。するとたちまち動物愛護団体等から指定の撤回を求める抗議や反対署名が起こり、結局その方針を撤回するという出来事がありました。このニュースを聞いて私は、生態系被害防止外来種とか防除推進外来種って初めて聞いたけどいったいなんなんだ? 外来生物法の特定外来生物とは違う何かなのかな…等と恥ずかしながら頭が混乱してしまいました。そこで改めて現在の外来生物対策に関する仕組みや法律用語等について勉強してみました。
◆防除推進外来種と生態系被害防止外来種とは何だ?
まず、表記の質問をそのままAI(GoogleのGemini)に投げてみました。その回答は以下の通りです。
「生態系被害防止外来種は、外来生物法に基づき環境省が指定していた特定外来生物には選定されていないが、適否について検討中、または調査不足から未選定とされている生物種のことです。防除推進外来種は環境省の生態系被害防止外来種リストにおいて生態系に大きな影響を及ぼし、地域や状況に応じて防除を進めるべきとされている動植物の区分です。」
…うーん、防除推進外来種は特定外来種の一歩手前ってこと? それじゃ生態系被害防止外来種リストというのは特定外来生物検討種リストってことか? それでその中にまた防除推進外来種という区分があるって…。ますます、頭が混乱してまいりました。
◆生態系被害防止外来種と外来生物法での外来種は同じじゃなくて違う?
なんだか根本的に理解できてないような気がしましたので、そもそも外来生物法における外来生物の定義が何か、改めて調べてみると次の解説文書に行き当たりました。
「一般的には、「外来種」とほぼ同義で用いられている事が多い。外来生物法では、「海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物」と定義されている「法律用語」。つまり、国外から日本に導入されるもののみを対象としており、いわゆる国内由来の外来種は含まない。」
おお、ということはネコは国内由来の外来種なので外来生物法の適用外。法律的に「特定外来種」という言葉は存在しない。生態系被害防止外来種リストは、外来生物法適用外の外来種も含む外来生物法とはまた別のリストだということですね。で、そのリストの中に防除推進外来種という区分があると... 。えーい、分かりにくいぞー。
<今月のデータ~害虫はどこまで耐える?>
今は年金生活ですが、以前は害虫の駆除を生業とする衛生管理会社(つまり消毒屋)に勤めていました。本社の研究部門に所属していた関係で害虫が環境の変化にどれだけ強いか、飼育していた虫を使って様々な実験や調査をした記憶があります。その中で「虫は空腹や温度、酸欠状態にどれくらい耐えられるか」をテーマに調べたことがありますので、得られた知見を三つほどご紹介しましょう。
◆虫は水なし餌なしでどれくらい耐える?
害虫5種(チャバネゴキブリ成虫、ノシメマダラメイガ幼虫、ノミバエ成虫、イエバエ成虫、コクヌストモドキ成虫)を10頭ずつ上部開口部をガーゼで覆った容器に入れ、実験室内の常温(約26℃)下に放置しました。それを1週間ごとに生死確認をしたところ、コクヌストモドキは6週間を超えても生存していましたが他4種は1週間で全て死亡していました。コクヌストモドキは数か月生存するという報告もあります。なお、コクヌストモドキは乾燥して粉末状になった食品を発生源とする貯穀害虫の仲間で、この仲間の虫(コクゾウやシバンムシ等)はおおむね長期間の飢餓に耐えるといわれています。
◆虫は冷蔵庫の中でどれくらい生きられる?
害虫5種(チャバネゴキブリ成虫、ノシメマダラメイガ幼虫、ノミバエ成虫、イエバエ成虫、コクヌストモドキ成虫)を10頭ずつ上部開口部をガーゼで覆った容器に入れ、冷蔵庫の室内(約5℃)下に放置しました。それを1週間ごとに生死確認をしたところ、チャバネゴキブリ成虫とノシメマダラメイガ幼虫は1週間、イエバエ成虫は2週間、コクヌストモドキ成虫は3週間、ノシメマダラメイガ幼虫は4週間で全て死亡していました。コクヌストモドキ成虫とノシメマダラメイガ幼虫は現場では小麦粉等の穀粉の中に潜り込んで生息していますので、現実の事例では生存期間がさらに長いものと推測されます。
◆虫は酸欠状態でどれくらい生きられる?
ノシメマダラメイガ幼虫を市販の菓子袋(ポリプロピレン製)に10頭ずつ密封し袋内に窒素を充填置換して無酸素化した袋を9袋用意し、常温下で1日後、2日後および4日後に3袋ずつを開封して生死確認しました。その結果、1日後には3袋中の1袋で、2日後には3袋中の2袋で、4日後には3袋全てで10頭の死亡が確認できました。なお、菓子袋に脱酸素剤(エージレス)を入れた同様の実験でも3~5日後に全て死亡したとの報告があります。
<いきもの写真館No.188 トゲナナフシ >

8月3日に千葉県を豪雨が襲い、私の自宅がある佐倉市も大きな被害を受けました。自宅近くの交差点や水田も冠水し家の前の道路も川のようになりましたが、幸い自宅までは水が来ず被害がありませんでした。水が引いてから家の前に出てみると、出入口横のブロック塀に向かいの森から逃げてきたのか写真の虫がとまってました。ナナフシの幼虫?…かと思ったのですが体が随分と太め。調べてみたらナナフシの仲間のトゲナナフシでした。全国的には珍しい虫ではありませんが、千葉県のレッドデータブックでは「一般保護生物(準絶滅危惧)」に指定されているようです。普段は森の下草の中や石垣等の隙間にいて夜になると下草を食べに出てくるそうなので、森が冠水してあわてて逃げてきたんでしょうか。この虫、決して珍しくはないんですが 何故か雄がほとんど見つかっていないとのこと。単為生殖で増えているんじゃないかといわれています。
このブログの内容に関するお問い合わせは以下にお願いします。
生物技術者連絡会 邑井良守 yoshimori.murai@gmail.com














































