生物技術者連絡会通信 2026年10月号

生物技術者連絡会通信 2026年10月号

 

<生物技術者のための専門用語集~バードバンディング>

 10月の初め、長野県へ旅行へ行った際に知人から「近くでバンディングやってるから見に来ない?」というお誘いを受けまして、その現場を訪問してきました。バンディングというのは正確にはバードバンディングのことですが、さてそもそもバードバンディングとはなんでしょう。

 バードバンディングとは、環境省が(公財)山階鳥類研究所への委託事業として実施している鳥類標識調査のことです。環境省の生物多様性センターHPから引用しますと「野生の鳥に個体識別のための足環などを装着して放鳥し、再捕獲や観察によって情報を収集、解析することによって、鳥類の渡りの実態や様々な生態を明らかにし、鳥類の保全施策やそのための国際協力の推進に役立てる調査」です。1924年から開始しているとのことですので、今年で開始から102年になるんですね。知人は山科鳥類研究所から認定された鳥類標識調査員(通称ではバンダーといいます)の一人なのです。バンダーは現在450名ほどがボランティアとして活動していて、全国に60か所ある観測調査ステーションと各地の許可されたフィールドで年間おおむね18日間の標識調査を実施しています。で、バンダーにはどうしたらなれるのか興味を持ったりしませんか?

それについては山階鳥類研究所HPのバードバンダーに関する記述を引用してみましょう。「バンダーは、鳥類の識別について十分な知識を持ち、鳥を安全に捕獲して放鳥する技術を身につけていることが必要です。バンダーになるには十分な訓練を積んだ後、山階鳥類研究所が実施するバンディング講習会に参加し、バンダーの資格があると認められなければなりません。認定を受けたバンダーは、毎年環境省へ鳥獣捕獲許可の申請をして許可を受け、それを携帯して調査をおこなっています。」以下2枚の写真は順に捕獲鳥への標識の取り付け作業、捕獲した小鳥を安全に放鳥するところです。

 


 知人は国立の森林研究機関に属する調査研究員の指導を受けて訓練を積み、バンディング講習会に参加することによりバンダーになれたといいます。定年を迎えたサラリーマンで自然を愛している方々の多くはバードウォッチングの趣味に走っているようですが、バードバンダーを目指すという道に進む方がより鳥たちを守ることに貢献している気がして、その後の人生への満足感が出るんじゃないかなと思いました。全国に450人しかいないという希少感というか特別感も感じますしね。それで、訪問した調査現場の調査責任者(バンダー仲間では網場主と呼んでるみたいです)の方にこの仕事に関するご苦労について聞いてみたところ以下のようなコメントをいただきました。

「調査員の数が少ないので慢性的に人手不足。調査は2名で実施すると効率がいいのだが1名で調査することが多い。」

「カスミ網を使うので調査場所を見たハイカー等から不法捕獲しているとむちゃくちゃ怒られることがある。説明しても聞いてくれない。」

「なので、あまり人が来ない場所に調査地点を設定したいが、そういった条件に合った場所を見つけ出すのは難しい。」

「再捕獲することにより良いデータとなるのだが、実際には再捕獲される個体は全体の数パーセント。苦労が多いのにあまり報われない。」

「標識だけじゃなくGPS機器も使うとか高度な調査手法を導入したいがカネがない。小鳥相手なので技術的なハードルも高い。」

 というわけで、定年過ぎて金もそこそこある。鳥が好きなんだが何かやりがいのある人生を送れることないかな?…と思っているあなた。バンダーになることに挑戦するのはいかがでしょう。

 

<今月のデータ~食品に混入しちゃう虫ワースト1:ノシメマダラメイガ>

 今は年金生活ですが、以前は害虫の駆除を生業とする衛生管理会社(つまり消毒屋)に勤めていました。本社の研究部門に所属していた関係で、飼育していた虫を対象に様々な実験や調査をした記憶があります。職業上、工場や家庭で食品に混入して食品の中で増えてしまう虫には詳しくなってしまいましたので、混入事故を引き起こす害虫について少しご紹介しましょう。事故の原因となる虫は多数ありますが、その中でも事故件数が日本では際立って多い虫がいます。今回は他種をぶっちぎりの事故件数で引き離すワースト1の虫、ノメマダラメイガです。成虫はこんな虫です。


 今は食品に虫が入る異物混入事故が起こってしまうとたちまちニュースとなり、工場なら製造を中止し製品を回収するといった大騒ぎになってしまいます。そのようなニュースは今では年に数件といったところですが、しかしこれは食品が店頭で売られたあとに消費者が発見し、しかるべきところ(たいていは消費者センターか保健所)に通報されて発覚した事例です。実際には食品の原料から見つかった、もしくは食品を製造中に見つけた、あるいはできた食品を検品中に見つけた等といったニュースにはならない事例がもっとたくさんあるのです。今はこのような事例についても事故の再発を防ぐため、混入事例が発見されたら直ちにどんな虫がどうして混入したかを調査して対策を施すシステムが法律等によって義務付けられています。それで、勤めていた会社ではそれらの調査事例を何年にも渡って集積してきたんですが、過去のある8年間に食品に混入したすべての事例を調べてみると断トツのトップが下表のとおり「マダラメイガ類」で、このグループのほとんど全てがこの虫です。まさしくワースト1です。

 


 この虫は貯穀類(コメやムギ、大豆等)の大害虫として知られています。さらには干しブドウ等の乾果、小麦粉や米粉等の製粉、ビスケットといった製菓など、あらゆる食品に発生します。特に好きなのは粉末化した食品で、幼虫は粉末の中に潜り込み糸を出して粉末の中に繭を作ります。下の写真は幼虫です。

 

 数ミリと小さい幼虫は餌であり住処でもある食品の中へ積極的に近づき、わずかな隙間をも通り抜けて入って行けます。このためコンビニで売られているサンドイッチや弁当を買って開けてみたら、包装やふたの隙間を通って入った幼虫がこんにちは…という事態になります。その侵入能力たるや恐るべきもので、高級洋菓子によくある丸い金属製の化粧箱のふたを閉めた状態でも幼虫が隙間から入れることが実験的に確かめられているほどです。さらに問題なのは、食品そのものの中に住みつきますので発見されたらその食品そのものを廃棄しなくてはならないこと。虫を駆除するだけではすまないということですね。

 このように食品業界では最悪の虫なので、工場の防虫管理対策を請け負う消毒屋はこの虫が工場に住みついているか否かを成虫で確認できる特殊なトラップを使い、この虫が住みついている痕跡(幼虫が出す糸や幼虫の這跡等)がないか常時監視しています。聞いたことがない名前の虫だと思いますが、おぼえておくと良いですよ。

 

<いきもの写真館No.190 トチカガミ>


 10月中旬に敦賀市の中池見湿地へ行ったところ、秋も深まってきているのにため池の水面に咲いていたので驚いて撮った1枚。トチカガミ科トチカガミ属の水生植物。東アジアが原産で日本へ来た帰化植物と考えられていますが、渡ってきた時期が有史以前なので法律でいうところの外来生物ではありません。現在は本州から南西諸島にかけて分布しています。水の中で生育する水生植物には根が水底の泥の中に入っているものと根も水中に浮かんでいるものとがあり、トチカガミは後者の浮葉植物。スイレンに似た葉の裏面中央の膨らみが浮き袋になっていてプカプカと浮きながら葉と根と茎が水面に広がっています。白い3枚の花弁を持つ花が1日だけ咲きます。昔は各地の池沼で見られましたが、水質汚濁とともに減少しているようで環境省レッドリストでは準絶滅危惧種(NT)になってます。

 

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生物技術者連絡会通信 2026年9月号

生物技術者連絡会通信 2026年9月号

 

<生物技術者のための名所案内~木場潟公園>

 9月の里山を歩いても咲く花は少ないし鳥も端境期で少ない。生物技術者にとってはちょっとつまらない時期ですよね。里山の緑がずっと濃くなる9月は林床に光が当たらなくなるので咲く花も少なくなります。この時期、どこか花に出会える環境はないかなと頭をひねって…思いつきました。そうだ、水生植物園に行こう!

 金沢市から車で南に1時間弱走ると木場潟公園というところがあります。ここは木場潟という湖の周辺をそっくり公園としたところで、きれいに整備された遊歩道が湖を一周しています。遊歩道の長さは一周して6.4Km。ゆっくり歩いて2時間弱と、全く起伏がない道ですから少し強度の高い歩行トレーニングをするのには絶好ですね。

 

 訪れた9月25日は多くの人、特に老境に入ったカップルの方々が散歩を楽しんでいました。遊歩道の途中には東西南北、および中央の五つの園地があるのですが、そのうちの西園地には水生植物園が設けられています。水生植物というのは地中じゃなく水中に根をはって生育する植物のことで、ここには18種の水生植物が集められています。

 

 水生植物のいいところは花が咲く時期が7~9月の種類が多く、里山に咲く花の時期よりも遅いところ。訪れた時にも5~6種ほど、花を咲かせている種類を見ることができました。いくつかご紹介しましょう。

 

 スイレンの仲間のコウホネです。水面からニョキッと1本長い茎の先に黄色くて丸い花をつけます。根は水中の底まで伸びて泥の中に入ってます。

 

 アサザです。花はスイレンに似てますがミツガシワ科の植物。黄色い花弁の縁が細かく縮れているのが特徴です。環境省レッドデータブックの準絶滅危惧Ⅰ種。

 

 ガガブタです。写真では見にくいですが白く小さな花をいっぱいつけます。ミツガシワ科の植物で環境省レッドデータブックの準絶滅危惧種。

 

 ミズアオイです。鮮やかな青色がきれいですね。昔は田んぼの隅でもいっぱい咲いていたんですが今はほとんど見られなくなりました。環境省レッドデータブックの準絶滅危惧種。

 公園内にはボート、釣り桟橋、農業体験ハウスなどいろいろな施設があります。貸自転車で湖を30分程度で一周するも良し。そしてここは冬になるとたくさんのガンカモが渡来して一気ににぎやかになります。冬に来るとガンカモを狙う猛禽類も来てて次のような写真も撮れちゃったりします。

 

 昨年の1月に撮った写真。ミサゴが掴んでいるのはコイかな…。花を撮るなら夏、鳥を撮るなら冬ということで、一度出かけてみてはいかがでしょうか。

 木場潟公園の公式HP https://kibagata.com/ 

 

<今月のデータ~害虫は防虫網戸を通り抜けられる?>

 今は年金生活ですが、以前は害虫の駆除を生業とする衛生管理会社(つまり消毒屋)に勤めていました。本社の研究部門に所属していた関係で、飼育していた虫を使って様々な実験や調査をした記憶があります。前回に引き続き今回は「虫は窓に取り付けた防虫網戸を通り抜けられるか」につき調べた知見をご紹介しましょう。

 猛暑日や真夏日になった夜に寝に入る際、窓を開けて涼しい夜風を部屋に入れたいと思ったけど、蚊などの虫が入ってくることを心配して躊躇したことはありませんか? 窓に防虫網戸がついているにもかかわらず、です。そもそも、防虫網戸で虫の侵入を防げるんでしょうか?  

 網戸の表面に見える網目の大きさを示す単位をメッシュといいます。これは長さが1インチ(約25.4mm)の間に網目が何本あるかを示すもので、市販され一般家庭の窓に取り付けられている防虫網戸は16~24メッシュ、食品工場のように厳密な防虫対策が求められる施設向けの防虫網戸は30~40メッシュ程度となっています。一般家庭向けの防虫網戸は蚊の侵入を阻止することを目的としたもので、体長が4~5mm程度のヒトスジシマカやアカイエカは物理的に網目を通ることができません。しかし、体長がそれ以下の虫は通過が可能です。30~40メッシュの防虫網戸では体長が1mm程度の虫もほぼ9割がた侵入を阻止できますが、やはり体長がそれ以下の虫は通過が可能です。そして日本には名前が付いた虫だけでも約3万種が生息していて、体長が1mm以下の虫もたくさんいるのです。ではメッシュ数をもっと上げた網戸を作ればいい? いやいや、そういうわけにはいきません。メッシュ数を40メッシュ以上に上げると網目が細かくなりすぎて風通しが悪くなってしまい、網戸をつけた意味がなくなってしまいます。

つまり、防虫網戸は蚊の侵入阻止という限定した目的では有用ですが、これを取り付けることにより虫の侵入を完全に阻止できるものではないのです。

 ちなみに、防虫網戸は普通のガラス戸のように窓枠が固い物質で支持されているわけではなく、いわば格子のない障子扉のようなものなので老朽化するとたちまちに網戸自体が歪んで大きな隙間が生じてきます。はられているプラスチック製の網自体も紫外線ですぐに劣化しますから、放置すれば取り付けても数年で虫の侵入阻止効果はなくなるものと思った方が良いでしょう。

 

<いきもの写真館No.189 ミソハギ>


 里山の森は夏になるとほぼ深い緑一色となり、森を散歩しても道端に咲く花はすっかり少なくなります。見つかる花はだいたいキツネノカミソリやツリフネソウといった赤い花ですが、この時期としては珍しい青紫色のこの花をたまに見かけることがあります。ミソハギの「ミソ」は禊(みそぎ)のミソに由来するという説があって、この花はお盆に供える花として知られてきました。日本では北海道から九州まで、その他朝鮮半島、中国北部に分布し里山の日当たりのよい湿地や水辺に生育しています。 花期は7~9月、直立した茎の先に赤紫色の花をたくさんつけます。機械が入りにくい 山際沿いの田畑が近年無くなっていっているせいか、田んぼの畔でよく見かけたこの花もすっかり少なくなってしまいましたね。

 

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生物技術者連絡会通信 2026年8月号

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<生物技術者のための用語集~防除推進外来種と生態系被害防止外来種>

 先々月、環境省と農林水産省が生態系被害防止外来種リストの対象を従来の「ノネコ」から「イエネコ」全体へ拡大し、「防除推進外来種」に位置づける方向で調整していることが報道されました。するとたちまち動物愛護団体等から指定の撤回を求める抗議や反対署名が起こり、結局その方針を撤回するという出来事がありました。このニュースを聞いて私は、生態系被害防止外来種とか防除推進外来種って初めて聞いたけどいったいなんなんだ? 外来生物法の特定外来生物とは違う何かなのかな…等と恥ずかしながら頭が混乱してしまいました。そこで改めて現在の外来生物対策に関する仕組みや法律用語等について勉強してみました。

◆防除推進外来種と生態系被害防止外来種とは何だ?

 まず、表記の質問をそのままAI(GoogleのGemini)に投げてみました。その回答は以下の通りです。

 「生態系被害防止外来種は、外来生物法に基づき環境省が指定していた特定外来生物には選定されていないが、適否について検討中、または調査不足から未選定とされている生物種のことです。防除推進外来種は環境省の生態系被害防止外来種リストにおいて生態系に大きな影響を及ぼし、地域や状況に応じて防除を進めるべきとされている動植物の区分です。」

…うーん、防除推進外来種は特定外来種の一歩手前ってこと? それじゃ生態系被害防止外来種リストというのは特定外来生物検討種リストってことか? それでその中にまた防除推進外来種という区分があるって…。ますます、頭が混乱してまいりました。

◆生態系被害防止外来種と外来生物法での外来種は同じじゃなくて違う?

 なんだか根本的に理解できてないような気がしましたので、そもそも外来生物法における外来生物の定義が何か、改めて調べてみると次の解説文書に行き当たりました。

 「一般的には、「外来種」とほぼ同義で用いられている事が多い。外来生物法では、「海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物」と定義されている「法律用語」。つまり、国外から日本に導入されるもののみを対象としており、いわゆる国内由来の外来種は含まない。」

 おお、ということはネコは国内由来の外来種なので外来生物法の適用外。法律的に「特定外来種」という言葉は存在しない。生態系被害防止外来種リストは、外来生物法適用外の外来種も含む外来生物法とはまた別のリストだということですね。で、そのリストの中に防除推進外来種という区分があると... 。えーい、分かりにくいぞー。

 

<今月のデータ~害虫はどこまで耐える?>

 今は年金生活ですが、以前は害虫の駆除を生業とする衛生管理会社(つまり消毒屋)に勤めていました。本社の研究部門に所属していた関係で害虫が環境の変化にどれだけ強いか、飼育していた虫を使って様々な実験や調査をした記憶があります。その中で「虫は空腹や温度、酸欠状態にどれくらい耐えられるか」をテーマに調べたことがありますので、得られた知見を三つほどご紹介しましょう。

◆虫は水なし餌なしでどれくらい耐える?

 害虫5種(チャバネゴキブリ成虫、ノシメマダラメイガ幼虫、ノミバエ成虫、イエバエ成虫、コクヌストモドキ成虫)を10頭ずつ上部開口部をガーゼで覆った容器に入れ、実験室内の常温(約26℃)下に放置しました。それを1週間ごとに生死確認をしたところ、コクヌストモドキは6週間を超えても生存していましたが他4種は1週間で全て死亡していました。コクヌストモドキは数か月生存するという報告もあります。なお、コクヌストモドキは乾燥して粉末状になった食品を発生源とする貯穀害虫の仲間で、この仲間の虫(コクゾウやシバンムシ等)はおおむね長期間の飢餓に耐えるといわれています。 

◆虫は冷蔵庫の中でどれくらい生きられる?

 害虫5種(チャバネゴキブリ成虫、ノシメマダラメイガ幼虫、ノミバエ成虫、イエバエ成虫、コクヌストモドキ成虫)を10頭ずつ上部開口部をガーゼで覆った容器に入れ、冷蔵庫の室内(約5℃)下に放置しました。それを1週間ごとに生死確認をしたところ、チャバネゴキブリ成虫とノシメマダラメイガ幼虫は1週間、イエバエ成虫は2週間、コクヌストモドキ成虫は3週間、ノシメマダラメイガ幼虫は4週間で全て死亡していました。コクヌストモドキ成虫とノシメマダラメイガ幼虫は現場では小麦粉等の穀粉の中に潜り込んで生息していますので、現実の事例では生存期間がさらに長いものと推測されます。

◆虫は酸欠状態でどれくらい生きられる?

 ノシメマダラメイガ幼虫を市販の菓子袋(ポリプロピレン製)に10頭ずつ密封し袋内に窒素を充填置換して無酸素化した袋を9袋用意し、常温下で1日後、2日後および4日後に3袋ずつを開封して生死確認しました。その結果、1日後には3袋中の1袋で、2日後には3袋中の2袋で、4日後には3袋全てで10頭の死亡が確認できました。なお、菓子袋に脱酸素剤(エージレス)を入れた同様の実験でも3~5日後に全て死亡したとの報告があります。

 

<いきもの写真館No.188 トゲナナフシ >


 8月3日に千葉県を豪雨が襲い、私の自宅がある佐倉市も大きな被害を受けました。自宅近くの交差点や水田も冠水し家の前の道路も川のようになりましたが、幸い自宅までは水が来ず被害がありませんでした。水が引いてから家の前に出てみると、出入口横のブロック塀に向かいの森から逃げてきたのか写真の虫がとまってました。ナナフシの幼虫?…かと思ったのですが体が随分と太め。調べてみたらナナフシの仲間のトゲナナフシでした。全国的には珍しい虫ではありませんが、
千葉県のレッドデータブックでは「一般保護生物(準絶滅危惧)」に指定されているようです。普段は森の下草の中や石垣等の隙間にいて夜になると下草を食べに出てくるそうなので、森が冠水してあわてて逃げてきたんでしょうか。この虫、決して珍しくはないんですが 何故か雄がほとんど見つかっていないとのこと。単為生殖で増えているんじゃないかといわれています。

 

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生物技術者連絡会通信 2026年7月号

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<生物技術者が見た風景~金沢城公園湿生園でトンボを探す>

 夏を代表する昆虫といえば、私にとってはトンボです。子供のころ捕虫網を持って池の周りを走り回った思い出があり、大人になっても仕事でやはり飛んでくる彼らを獲りまくってましたから。夏になると川や池の水面でちょっと待っていれば必ずやってくるトンボですが、日本に約200種生息するこの虫が数類多く見られる水辺となるとそう多くはありません。私の家から30分ほど歩いたところに金沢城公園がありますが、その中の湿生園という場所はそのような多数のトンボがみられる水辺の一つです。その全景はこちら。

 

 写真は6月の下旬に行ったときのものです。池にはスイレンやコウホネ等の湿生植物が植えられていて、花が咲くこの時期はまるでモネの絵のようです。このときに出会ったトンボたちを4種ほど写真でご紹介しましょう。

 

 シオカラトンボです。水辺ならどこでも見られるなじみ深いトンボですね。

 

 オオイトトンボ。全国に分布しますが、太平洋岸沿いではあまり見られなくなってきました。

 

 ショウジョウトンボ。アカトンボの仲間で雄は全身真っ赤。まさしくアカトンボの中のアカトンボといったところ。

 

 チョウトンボ。トンボなのに前翅よりも後翅が大きく、ひらひらとゆっくり飛ぶおかしなトンボ。おまけに翅は真っ黒なのに虹色に光ってとてもきれいです。

この他、ナツアカネやギンヤンマも飛んでました。ギンヤンマもきれいなんだけど、動きが早くて撮影が超難しい....。金沢城公園では城郭建築や石垣に目が行きがちですが、いきもの好きには森に棲むモリアオガエルとこの湿生園に飛ぶトンボたちがおすすめです。

 

<生物技術者のための名所案内~手取峡谷:綿ヶ滝>

 夏真っ盛りのこの頃、多くの場所で気温が40度を超える酷暑に見舞われています。一方、日本海側に位置する金沢市は真夏でも酷暑日になることは少なく、気温が上がってもせいぜい32〜34度くらいです。とはいえ、30度超えの真夏日が連日続くとエアコンきかせた家から外に出るのがさすがに億劫になりますね。こういうときは渓谷に流れ落ちる滝のそばに行って涼んでしまおう...ということで、金沢市内から南に約20kmほど下ったところにある綿ヶ滝(わたがたき)へ行ってみましたのでご紹介します。

 金沢市内から国道157号線を車で南下すると山が迫り、やがて手取川沿いに山間部を進む道になります。山間部に入って15分ほどすると「右折すると手取峡谷」という標識が出てきますので、右折して橋を渡り標識の矢印を1km辿っていくと滝に着きます。トイレ施設のある駐車場から数分歩けば滝へ降りる入口があるんですが、ここから滝壺へ向かってほぼ垂直に階段で降りていく道にちょっとビビります。

 

 おっかなびっくりでゆっくり降りていくと数分で到着。滝壺のすぐ横まで行けますが落差が32mもある大きな滝なので見上げてみても、階段の途中から見下ろしてみてもその全貌を見ることはできません。滝の周りは水しぶきで常に濡れていて、滝が流れ落ちる断崖も含めて植物に埋め尽くされています。滝からのミストを浴びて花も元気に咲いてましたので幾つかご紹介します。

 

 水しぶきを浴びてみずみずしく見えるオオバギボウシ。

 

 草むらの中からニョキッと突き出て咲くウバユリ。

 

 滝壺の岩の間にひっそり咲くコオニユリ。訪れたのが平日でしたので私の他に人はおらず。1時間ほどゆっくり涼んできました。夏の暑さを忘れて心静かな時間を過ごせる場所です。この道からは滝の全貌を写真に収めることはできませんが、駐車場から数分下流に向かって歩くと滝の全貌を眺めることができる展望台があります。

 

 望遠レンズを使って撮るとバッチリ。写真に収めたい人はこちらからどうぞ。

 

<いきもの写真館No.187 ニホントカゲ >


 綿ヶ滝の帰り道、急な階段を登っていった途中で日向ぼっこしているニホントカゲの幼体に出会いました。成体は全身黄褐色ですが今年生まれの幼体は黒い体色に白い縦筋が数本あり、尾の部分のみ縦筋が青色になっています。カナヘビと違って体の表面に光沢があって、幼体は色彩的にとてもきれいですねー。学問的には2012年以降、本州の中部あたりを境にDNAによる系統解析で種を二分できるということで石川県産はヒガシニホントカゲになるんだそうです。しかし、見た目では区別できないんじゃどっちでもいいんじゃないかと思ってしまいますね。

 

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生物技術者連絡会通信 2026年6月号

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<生物技術者のための名所案内~白山高山植物園>

 若いころは盛んに登山をして日本アルプスの稜線を花や鳥を愛でながら歩き回っていたものですが、68歳にもなると腰を痛めていることもあって山登りにはとんと縁がない生活になりました。登山できる体力のない年寄りはもう高山植物のお花畑をこの目で見ることはかなわないのか…という嘆きはまだ早い。世の中には山登りで歩いて行かなくても車やバスを使い、ほんの少し歩いていけば出会える高山植物のお花畑もあるんですよ。北アルプスですと栂池自然園が有名ですが石川県にも同様の場所があります。金沢市から国道157号線を車で1時間半ほど南に下ったところにある白山高山植物園です。ここは白山山頂付近に展開するお花畑に咲く植物を標高1000m以下の試験地に移植栽培し、NPO団体による管理のもとで約7600㎡のお花畑として定着させた場所です。白山山頂へは丸1日、標高差1500mの登山道を歩いて行かなくてはなりませんがこちらは駐車場から10分ほど歩けば到着。森の坂道を抜けたら突然こんな風景が飛び込んできます。

 

 訪れたのは6月13日でしたが山の斜面に見られる黄色はすべてニッコウキスゲの花です。斜面のあちこちに遊歩道が設けられていて、2か所ほど休憩所のテントが設置されていました。

 

 植物園は南北に延びる谷間の西側斜面に立地していて、谷間を挟んだ向こう側には白山山系の稜線を眺めることができます。

 

 ニッコウキスゲの手前に咲くのはヤマブキショウマ。最奥には白山の大汝峰から別山に至る稜線が見えています。

 

 当日はたくさんの植物を見ることができましたが、その幾つかを写真でご紹介しましょう。まずはイブキジャコウソウ。ハーブのタイムと同属の花です。

 

 タカネナデシコです。平地にあるカワラナデシコより花が大きくて花弁の切り込みが深いですね。

 

 タカネマツムシソウです。6月なのにもう咲いてましたね。

 

 ニッコウキスゲとともにササユリもたくさん咲いてました。

 白山高山植物園は6月上旬から7月上旬の1か月のみ開園します。2026年の開園期日は6月6日~7月5日です。入園料は500円で開園期日は開花状況により毎年変動します。現地には国道分岐から駐車場へ至る車道の途中にある施設以外にトイレはありません。売店や自販機もありませんのでご注意ください。詳細はHPでご確認ください。 

https://garden.hakusanmab.org/index.html

 

<今月のデータ~金沢城公園のモリアオガエル繁殖状況2026>

 2020年から毎年観察している、金沢城公園に棲むモリアオガエルの産卵状況ですが今年も見てきました。7年間のデータをとりまとめた表をご覧ください。

 今年は梅雨入りが大幅に遅れて6月20日になったこともあってか、繫殖期間を通して観察された卵塊数は過去最低数となりました。期間中の降雨量が少なかったことが大きな要因だと思いますが、現在進行中の二の丸御殿整備工事の影響もあるのかもしれません。ただ、今年は二の丸内堀石垣上の樹木列の常緑樹2本にも産卵しているのが確認できましたが、そこはまさしく二の丸御殿整備工事現場に接する箇所なので彼らのたくましさもちょっと感じられます。二の丸内堀には相変わらず2023年から現れたスッポンが2頭泳ぎ回っていました。

 

<いきもの写真館No.186 シマヘビの白化個体 >

 金沢城公園の二の丸内堀でモリアオガエルの産卵状況を見ていたところ、堀の中を悠々と泳いでいる白いヘビを見かけました。頭部を見ると目の後ろに黒い筋が見えて胴体にも縞模様が見えますのでシマヘビの白化個体のようです。モリアオガエルのオタマジャクシが落ちてくるのを狙ってるようですね。シロヘビといえば奈良県の大神神社にいるアオダイショウの白化個体(神蛇と崇められていて棲んでいる神木の根元に生卵を供えるしきたりがあります)が有名ですが、シマヘビでもまれに白化個体が出ます。シマヘビは色彩の変異が大きくて黒化個体もあるんですがこちらは結構数が多く、黒化個体は比較的性格が獰猛なんだとか。

 

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生物技術者連絡会通信 2026年5月号

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<生物技術者が見た風景~5月に花と虫を探す>

 5月に入ると春に見た可憐な花たちは消えて、ユリのような華美な夏の花々が見られるのは6月以降。野の花を愛でる人たちにとって5月はまるでエアポケットのような気分になります。しかし季節的には外へ出かけるのに最高のコンディション。山や森へ出かけたくてうずうずしますよね。今月も北陸の3か所、いろいろな場所に出かけて自然を満喫してきました。

①富山県砺波市 頼成(らんじょう)の森

 草花が見れないのなら木の花を見よう!…ということで富山県の県立自然公園「頼成(らんじょう)の森」にやってきました。ここは面積約115haの広大な森林公園で大部分が自然林に覆われています。ここでの5月の見どころはホオノキとヤマボウシの白い花です。

 

 若葉茂る鮮やかなグリーンの森に白いアクセント。ホオノキはどでかい葉をつけた枝先にこれまたどでかい花を一つずつ咲かせます。ホオノキは樹高が20mにもなる高木のうえに葉が日本の広葉樹最大の大きさなので、森を歩くと容易に見つけることができる木です。それほどの木にさらに大きく白い花が咲くという。目立つのも当然ですね。ちなみにホオノキと同じ仲間(モクレン科)のモクレンやコブシは4月に花を咲かせます。

 

 ヤマボウシもまた葉の上を覆いつくす様に手裏剣みたいな形の花(本当は花じゃなく総がく片)をたくさん咲かせるのでとても目立ちます。遠くからこの花を見ると、まるで木に雪が積もっているように見えますね。ちなみにヤマボウシと同じ仲間(ミズキ科)のミズキやクマノミズキは6月に花を咲かせます。頼成の森にはどちらの木もたくさんあるようで、森の遊歩道を歩いているとあちこちで見ることができました。  

 頼成(らんじょう)の森HP https://www.bgtym.org/ranjyounomori/about/

②富山県朝日町 ヒスイ海岸

 森深い山で咲く花が少なくなったんだったら太陽がさんさんの海はどうだろう、ということで次に海岸へ行ってみました。同じく富山県の東部にある朝日町の海岸です。ここは砂浜ではなく砂礫の海岸で、隣の新潟県糸魚川市と同じく後背の山地からヒスイが混じる砂礫が川に流れてきて海岸に溜まっています。なので通称ヒスイ海岸と呼ばれます。休日に行ったところ多くの親子連れがあわよくばヒスイをゲットしようと海岸をうろうろしていました。彼らは海岸奥に帯状にのびる草地には目もくれないですが、そこでは紫色のハマエンドウとピンク色のハマヒルガオが足の踏み場がないほどの花盛りでした。

 

 おっと、まだ5月だというのにハマナスが咲き始めてましたよ。夏そのもののイメージみたいな花ですが結構花期が長いんですよね。空を見上げるとミサゴが海岸線に沿って行ったり来たり。ヒナたちに与える魚を一生懸命探しているようでした。

 ヒスイ海岸のHP https://www.asahi-tabi.com/hisuikaigan/

④福井県敦賀市 中池見湿地

 最後に行ったのは新幹線の駅から歩いて30分で行ける、おそらくは日本で一番交通の便が良い自然泥炭湿地の中池見湿地です。2012年にはラムサール条約湿地にもなりました。ここは日本でも有数のトンボ多産地で73種が確認されているそうです。私は6~7月にものすごい数のトンボが飛び回っている光景を何回も見てますが、5月に来たことがありませんでした。花はともかく、春のトンボたちが見たい!と思って来たのでした。

 

 実は私は鳥好きの花好きですが、必ずしも虫好きではありません。なので見かけたトンボを瞬時に同定するスキルは持ち合わせていないのですが、これは腹が太く平たくなってるので私にもわかりますね。ハラビロトンボです。

 

 ハグロトンボみたいですが翅の先端近くに白い部分が見えましたのでアオハダトンボかしら。間違ってたらすいません。アオハダトンボはハグロトンボと違ってきれいな水からしか発生しないそうです。

 

 サナエトンボの仲間だということは分かるんですがそれ以上はよくわかりません。腹部の先端が膨れてるからヤマサナエやキイロサナエあたりか? 間違ってたらすいません。  

 というわけで5月の旅はこれで終わり。個人的には6月のハイライトはモリアオガエルです。毎年金沢城公園での産卵状況をご報告してますので、今年も見に行ってきますね。

 

<いきもの写真館No.185 アカボシゴマダラ >

 5月上旬に千葉県佐倉市にある自宅周辺を歩いていたところ、雑木林沿いの藪の中でジタバタしているこの蝶を見つけました。「えっ、何これ? ひょっとしてオオゴマダラ? いや、ここは沖縄じゃないぞ。模様も何となくさっぱりしてるし…。」調べてみたら特定外来種のアカボシゴマダラでした。日本ではもともと奄美諸島にしか分布してなかった蝶ですが、1955年に埼玉県内で突如として出現し、以降は関東地方を中心に東西へ分布を広げています。その状況から人為的分布の可能性高く、特定外来種に指定されているわけです。見つけたら捕獲除去しておきましょう…。でもね、江戸時代までは九州にしか分布していなかったのに1940年代には中四国、1960年代には関西、21世紀に入ってからは関東から東北南部にまで分布を拡大したナガサキアゲハという蝶がいるんですが、こちらは自力の分布ということでOK。アカボシゴマダラもちょっとはしょっちゃったけど、遅かれ早かれいずれは自力で分布拡大してたんじゃないか。それを特定外来種という名で敵視するのはかわいそうとちょっと思ってしまいますね。

 

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生物技術者連絡会通信 2026年4月号

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<生物技術者が見た風景~本州横断花の旅>

 先月は富山県と福井県に早春の花を探しに行った話をしましたが、いい花に出会えて気持が乗ってきたので4月はさらにディープな花探し旅を実行することにしました。実家のある石川県金沢市から自宅のある千葉県佐倉市に向かって、半月かけて6か所を巡る旅です。さて、どうなったでしょうか。

①4月2日 金沢市不室町 直江谷健康の森

 金沢市街より約10km東方の山林内にある公園施設です。遊歩道をたどると太いスギが林立する谷間があり、そこが早春にはお花畑になります。 

 

 エンレイソウです。巨大なクローバーのような葉の中心からニョキッと、地味な色の花が出てますね。春になると落葉樹林の林床に咲く花で、形が面白いので私は好きです。古くから胃腸に効く薬草として知られていて漢字で書くと「延齢草」。他にキクザキイチゲも咲くんですが、行ったときは咲き始めの花が数輪あっただけでした。

②4月3日 金沢市本多町 本多公園の小径

 金沢市街のど真ん中。兼六園がある台地と武家屋敷跡地に造られた公園との間にある斜面林沿いの小径を歩きます。この小径、公園から鈴木大拙館という著名な哲学者を偲ぶ施設に抜ける道です。いわば金沢版の哲学の小径ですね。

 

 町の真ん中なんですけどきれいな紫色のキクザキイチゲが咲いてました。それに、整備された斜面林の林床は数種類のスミレたちで埋め尽くされてましたね。

③4月8日 愛知県豊橋市 葦毛湿原

 JR豊橋駅より東方へ約6.5km。バスに約30分乗り、降りたら30分弱歩いたところに葦毛湿原があります。大きな都市のすぐ郊外に湿原があるのってかなり珍しいですよね。夏には多種の食虫植物が見られることで有名らしいんですが、さて早春には何が咲いてるかな。

 

 湿地で花盛りだったのはハルリンドウでした。よく似たフデリンドウは落葉樹林の林床でまばらに見られますが、このハルリンドウは湿地で大きな群落を作ります。

 

 湿原内の木道を歩いてみたら、私の足元には果てしなくハルリンドウたちが咲いてました。

④4月13日 東京都武蔵野市 井の頭公園

 東京へやってきました。井の頭公園は吉祥寺駅から数分でいける大きな公園です。人通りの絶えない賑やかな公園ですが、公園内の御殿山と称する区画には武蔵野を代表する雑木林が残されています。この時期なら春の花たちに出会えるんじゃないでしょうか。

 

 キンランやニリンソウも咲いてましたが、ここでの一番はイカリソウでしたね。花の形が船の碇に見えるということでイカリソウ。花の色に変異があって白い個体が多いんですがこれはピンク色で美しい。雑木林の林床で一輪、ひっそりと咲いていました。

⑤4月16日 千葉県佐倉市 佐倉里山自然公園

 ここは私の自宅から歩いて10分程のところなので、散歩がてらよく歩きに来ます。耕作が放棄された3つの谷津(台地の端から長細く入り込んでいる谷間を千葉県ではこういいます。)とその周辺を佐倉市が里山環境を保持した自然公園として整備してまして、公園内の各所で春の花を見ることができます。

 

 この時期のハイライトはこれです。クマガイソウです。千葉県内にはクマガイソウが自生する場所が複数あって、ここはその最大級の自生地。数百のクマガイソウが咲き誇っている光景は見ものですね。地元ボランティアの方々が花が自生できる環境を大切に整備されている様子も見ることができました。

 

 この場所からもう一つ。公園内の各所で、それはそれは見事な群落を作っているのがこのキンラン。来たときはちょうど満開といった風情でした。

⑥4月17日 千葉県佐倉市 佐倉城址公園

 佐倉市は首都圏というには微妙な位置にありますので市内の各所に自然豊かな環境が残っています。旅の最後に向かったのは江戸時代の佐倉城の跡をそっくりそのまま公園にした佐倉城址公園です。サクラの名所として有名ですが、ここには4月末から5月初めにかけて大群落をつくる花もあるんです。 

 

 サクラが散った頃から落葉樹の葉が茂げそろうまで、春の花が咲き続く期間の終わりを告げる花と個人的に思っているのがこのオドリコソウです。花をじーっと見たら…ほら、菅笠をかぶった娘たちの姿が見えてきませんか。遊歩道の両側にびっしりとこの花が咲いてるのを見たら、まるで春が来たと喜び踊っているように思えちゃうんですよね。

 というわけで早春の花を巡る旅はこれで終わり。次は初夏の花々を巡る旅でもひとつ企画してみましょうかね。

 

<いきもの写真館No.184 カキドウシ >

 公園の芝地に接する森の際で見つけた1枚。家の庭で普通に生えて、根を長く遠くまで伸ばして垣根を越えて家の外にまで広がっていくから「垣通し⇒カキドウシ」。かつては人家の周りで普通に見られていたこの花も、最近では帰化植物に押されてずいぶん少なくなってきたような気がします。4〜5月に見られる青い花がきれいですが、顔を近づけるとミントのような香りがあって漢方薬になったり、ハーブティーとして楽しむこともできるいいやつです。

 

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