研究部会通信1月号

<研究部会の活動報告>
*報告できる事項は特にありません。

<動物遺物学の部屋>
第4回 獣毛を同定する手法(2)
 さて、皆さんの頭に生えている頭髪をモデルにして考えていきましょう。ヒトの毛も獣毛の一種ですからね。手にとって見てみると・・・ただの一本の線です。でも、よーく目をこらして見てみると、根元の先端(頭の皮膚に埋まっていた部分)が白っぽくて少し膨らんでいるのに気がつきます。白髪でも膨らんだ部分が分かりますよ。これがあるので、どちらが毛の先の方か根元の方かを見極めることができます。実は、今見ている部分が毛先の方なのか根元の方なのかが分かる、ということが獣毛を同定できる重要なポイントの一つなのです。とはいえ虫のように脚や羽や触角はないですから、さすがに目で見ているだけでは同定なんてできそうもありませんね。少しばかり工夫が必要です。
根元の部分がちぎれてなくなっていても、どちらが毛先の方か根元の方かを知る方法がもう一つあります。手にとってみた頭髪を、親指と人差し指でしっかりとつまんでみましょう。もう一方の手の親指と人差し指で毛を軽くつまみ、そのままどちらかの端に向かって「しごくように」滑らせてみてください。これを両方の端に向かってやってみると面白いことが分かります。一方は滑らかに動かせるのに、もう一方は何だかひっかかりがあってうまく動かせません。はい、滑らかに動かせる方向が毛先です。これは毛の表面にびっしりとついている「毛小皮」というウロコのようなものの成せるわざです。毛小皮(モウショウヒ)? 聞いたことのない単語ですね。じゃあ、英語にしましょう。キューティクルです。シャンプーやリンスのCMに出てきますよね。

この毛の表面にはり付いているキューティクル、動物の種類によって少しずつ形が違っています。なので、獣毛の表面を見ることができたらキューティクルがつくり出す模様が動物の種類によって特徴のある模様になっていることが分かります。この模様、ムズカシイ専門用語では表面紋理(ヒョウメンモンリ)といいます。どんな模様なのと思ったあなた、見たいですか?そう、こんな感じです。⇒
これはホンドテンの獣毛です。うそっ!と思うくらい幾何学的ですよね。いや、実に美しい。何も事前の知識がないままにこれを見てしまった私は・・・ハマリました。種類によってこの模様は様々ですが、もっと見たい方は・・・すいません、本を買ってください。
ということでキューティクルがつくり出す表面紋理が同定の重要なポイントになりますが、これを見るにはどうすればいいか、というお話は次回に。
今回の最後のお言葉です。
「しかし、想像に反し、動物は考えられているよりも、研究者が検出しようともくろんだ以上に複雑なのである。」 J・グールド

<いきもの写真館>

 ここでは、特に私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第46回はハクセキレイです。
至って普通のハクセキレイです。
ほんとに周りにはたくさんいますね。
最近では建物の天井裏に巣を作るやつまでいます。

<研究部会からのお知らせ>
 1月28日(土)のセミナーには30名ほどがお集まりいただきました。
ありがとうございました。
フィールド好きで動物好きの学生さんが何人かいらっしゃってましたね。
未来のフィールドバイオロジストになってくれるかな?