研究部会通信2月号

<研究部会の活動報告>
*報告できる事項は特にありません。

<動物遺物学の部屋>
第5回 獣毛を同定する手法(3)
 獣毛の表面は曲面なので生物顕微鏡で直接これを見ても一部しかピントが合わず、また模様を鮮明に見ることもできません。しかし、獣毛の表面の型をとって平たい面に移し、その型を顕微鏡でのぞけば観察することができます。
型をとる方法にはいろいろあって、身の回りにあるものを使ってもできます。例えば、透明なマニキュアをガラス板に薄く塗って、固く乾かしたものに獣毛を押し付け、その上からシンナー液を塗ります。そうすると、シンナー液がマニキュアの表面を溶かし、獣毛の表面の模様がつくことになります。外国ではマニキュアの代わりにプラスチックポリマーを使った例もあるようです。

この方法、私も試してみたんですがマニキュアが完全に乾くまで半日以上かかりました。それに、得られた模様の像もイマイチ鮮明ではなく、ちょっと人にお勧めできるものではありません。そこで、今のところお勧めしているのが「スンプ法による標本作成キット」というものを使う方法です。ネットで検索するといろいろ説明が出てきますので、詳しく知りたい方は各々調べていただくとして、これ実は日本人の発明品です。なので、外国の研究者でも獣毛の同定に取り組んでいる人が何人かいるようですが、彼らはスンプ法を使ってはいません。こんな便利なものがあるってこと、ぜひ教えてあげたいものです。このスンプ標本作成キット、昆虫採集マニアにはおなじみの「志賀昆虫普及社」というところで今も販売しています。→ http://www.shigakon.com/
この方法を使うと前回ご紹介したような美しい模様が観察できますよ。実際に見ているのは実物ではなくて「型」ですから、スンプ法でとった模様を「スンプ像」などと呼びます。型の取り方は図に示したような感じです。何回かやってみるときれいなスンプ像がとれるようになると思います。
 ということで、次回は動物の種類によってこのスンプ像がどのように変わっていくのか、というあたりの話を。
今回の最後のお言葉です。
「自然にあっては、すべてが美しく、すべてが良く、且つすべてが合理的である。もしこの世に虚偽や、不真実や汚わいが存在するとすれば、それはいずれも人間によって造られ、人間から出たものばかりである。」
ニコライ・バイコフ

<いきもの写真館>

 ここでは、特に私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第47回はロウバイです。
前にも紹介しましたが、私の家の庭で今年も咲きました。
ここのところ寒い日が続くのに、それでもやっぱり季節は巡ってくるんですね。
今年は2月12日でほぼ満開です。
来年も、また咲いたら報告します。