研究部会通信3月号

<研究部会の活動報告>
*報告できる事項は特にありません。

<動物遺物学の部屋>
第6回 獣毛を同定する手法(4)
 各動物のスンプ像の違いについて簡単に説明しましょう。その前に、動物の種類によってスンプ像が違うという話をしましたが、正確にいうと「スンプ像が違う部分がある」ということです。つまり、獣毛のある場所によっては違う模様に見えますが、ある場所によってはどの種類も同じような模様に見えるところがあります。人間や一部の動物をのぞき、たいていの動物の獣毛は毛の先から根元まで太さが同じではなく、毛の真ん中部分がふくれて太くなっています。また、それにともなって表面の模様も変わってきます。模式図にするとこんな感じです。

 毛の真ん中(毛幹部、一番太い部分は毛幹膨大部)や毛先の方では、スンプ像はどの動物も同じような模様になってしまいますが、毛の根元に近い部分(毛根部)では種類の特徴が出て、この部分が同定の役に立つのです。この点が分かっていないと、スンプ像を見ても何だか良くわからなくなるのでご注意を。


 さて、スンプ像の基本形として人間の毛を見てみましょう。その模様は例えていうと「さざなみ」です。こんな感じ→


これがイヌやネコ、タヌキといったネコ目の動物の毛になると模様が粗くなってきて、キューティクルの一つ一つがとがった感じになってきます。例えていうと「魚のウロコ」ですね。ネコだとこんな感じ→


ウサギ目やネズミ目になるとキューティクルの一つ一つがさらにとがってきて、細く長くなってきます。例えていうと「たけのこの皮」でしょうか。ヒメネズミだとこんな感じ→

とまあ、基本的にはネコやネズミ、モグラといった目のグループごとに割と決まった特徴が見られますので、慣れるとスンプ像を見ただけで「ああ、あの仲間だな」と見当がつくようになります。ただし、この特徴は一番太い剛毛(上毛)でのことで、細い柔毛(下毛)ではこんな特徴は出ませんので悪しからず。各目のグループの特徴については本に書いていますので、詳しく知りたい方はそちらをどうぞ。
このようにスンプ像から種類を同定することができますが、しかし動物なんて同じ種類でも個体差というやつがあるもの。スンプ像にはっきりした特徴が出ないやつだっています。特にイヌやネコなんて様々な品種があって、そのまた雑種もあるんですからスンプ像だけでは何だか良くわからないケースが次々に出てきたりします。そこで別の方法、髄質形状による同定も組み合わせると、同定できる可能性がぐんとアップしてくるんですが、次回からはその方法について。
今回の最後のお言葉です。
「未来のナチュラリストたちは、この惑星を開発し守ってゆくうえで、ひと昔まえのナチュラリストたちよりもずっと重要な役割をになわなければならない。問題がさし迫っているからだ。」 J・ダレル

<いきもの写真館>
 ここでは、特に私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第48回はカキドオシです。
そろそろ、近くの田んぼ際でこいつの花が咲いてきますね。
子供の疳の虫に効くそうで、カントリソウの別名があります。
前に紹介したムラサキサギゴケに似てますが、花の色はそれよりも薄いです。