研究部会通信2013年7月号

研究部会通信2013年7月号

<動物遺物学の部屋> 
第21回 糞と獣毛の話
 野生動物の食性を調べようとする場合、まず考えるのは糞分析ですね。
タヌキやテン等といった中型動物では、糞分析による食性調査がよく行われます。
世の中には野外で見られる糞の形状から哺乳類を特定できる、といった趣旨のガイドブックが何冊か出ています。
なので、フィールドを踏査して拾ってくる糞の全てが何の動物のものか特定できる・・・というわけには残念ながらいきません。
排泄直後の糞なら本に載っているとおりの形状でしょうが、数日たつと雨も降りますし土砂にも覆われます。
私の経験からいうと、8月にテンの糞を観察したところ排泄されて2週間後には形が全く崩れて糞とは判別できない状態になりました。
踏査して拾った糞なんて新しいのや古いのや様々ですから、形状だけではちょっと無理があるでしょう。
それじゃあ、糞中に含まれる獣毛から種類を同定したら? ということなんですが、ここで疑問がひとつ。
糞中から毛を検出したとして、それは糞をやらかした動物のもの?
それとも、餌動物のもの?
これが分からないと、同定しても意味ないじゃん・・・。
はい、分かるんですねこれが。
簡単に言うと、当該個体(つまり糞をした動物)の獣毛なら1本1本バラバラに分散した形で糞中から検出されます。
餌動物の獣毛なら束になってまとまった状態で糞中から検出されます。
キツネのように動物食に傾いている動物の糞になると、糞がまるごと毛玉になっていることもあります。
いわゆる「毛糞」というやつですね。
そんなわけで、検出される状態から餌動物のものか否かは割合簡単に区別できます。
ちなみに、当該動物の毛が良く検出される動物はネズミ類(ネズミ目)やネコ類(ネコ目ネコ科)です。
彼らはよくグルーミングをしますから。
そうそう、糞から検出される獣毛は折れてたりねじれていたりして状態が悪いですから、基本的には剛毛が検出できないと同定は難しいと思います。

最後に、今回のお言葉です。
「ぼくが書きたかったのは研究で何がわかったかということではなかった。まだ研究のとちゅうにあることについて書きたかった。いろんな失敗や、ばかばかしいまちがいを書きたかった。」日高敏隆

<いきもの写真館> 
 ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第63回はアマガエルです。

そう、おなじみのアマガエルです。
民家の庭先でもよく見られますね。
アマガエルはカエルの中でも結構乾燥に強い種類です。
水域からかなり離れた場所でも見ることができます。
空気が湿ってくるとこいつが鳴き始めて、「雨が近いな」なんて思ったりします。

<研究部会からのお知らせ>
 今月のお知らせは特にありません。
8月は夏休み、更新をお休みします。
9月にまた。