研究部会通信2014年5月号

<動物遺物学の部屋>
第30回 毛は何年持つ?
 獣毛は生きもの由来の物質ですから、そのうち腐って消え失せてしまうものなのでしょうか?
確かにその通りなのですが、獣毛を作っている物質はおおむねケラチンというたんぱく質です。
このケラチン、普通のたんぱく質よりも結びつきが強固で繊維に近い構造なので簡単には分解しません。
つまり腐ったりもろくなったりしにくい構造になっています。
なので、水につけても熱湯でゆでても全く変化しません。
それでは、そのまま置いておくといったい何年持つのか。
言い換えれば普通の状態でどれだけ保管できるのでしょうか。
科学的に何年持つかを調べたことはないのですが、以前古墳から出土した馬具に付着していた毛皮を調べたことがあります。
古墳時代(5世紀くらい)に作られたものですが、毛皮の獣毛から標本をとったところ、きれいな像が得られたことに驚いたものです。
毛皮はシカのもので、その年にとった毛皮から採取したものと言われても納得できそうなほどでした。
条件が良ければ何百年も持つ、ということなんでしょうね。
いや何百年どころか、エジプトのミイラにも髪が残っているものがありますが、あれもきっと標本にすれば普通に観察できるんだと思います。
私は、採取した獣毛は市販のビニール製チャック袋に入れて保管してます。
これだと百年以上持つでしょうし、次の世代に残せるコレクションとなるでしょう。
・・・って、そんなもの誰もいらないか。

今回のお言葉です。
「椎の木の姿は美しい。幹や枝はどんな線にも大きい底力を示している。しかし椎の木は野蛮ではない。葉の色にも枝ぶりにもどこか落着いた所がある。」 芥川竜之介

<いきもの写真館>
ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第71回はシマヘビです。

午前中、のんびり道端でひなたぼっこしてたのに、私が自転車で尻尾をひいてしまいました。
鎌首あげて怒ってます・・・

<研究部会からのお知らせ>
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