<動物遺物学の部屋>

第25回 獣毛同定の苦労話
 獣毛が同定できるまでには、いろいろと準備がいります。その中で、最も重要なひとつは比較対照標本の整備でしょう。
獣毛の種類を判定する決め手は、結局のところ「絵合わせ」です。当然それには合わせる絵、つまり比較対照標本が必要になります。
過去に何度か、こんな質問を受けたことがありました。「獣毛同定技術でニホンオオカミが生き残っているか調べられませんか?」
でも、それは無理です。だって、比較できるニホンオオカミの比較対照標本がないんですから。
同定できるのは比較対照標本が手に入っている種類だけなので、標本をどれだけ集められるかが同定技術の向上に直結します。
ということで、いままで標本となる獣毛をできる限り集めてきたんですが、これが結構大変。
まあ、アカネズミとかリス、キツネ、タヌキといった普通の種類なら、仕事のおりに集めたり友達からもらったりしてたちまちのうちに集めることができました。
しかし、日本に生息する哺乳類は約120種(海棲哺乳類は除く)。シカとかムササビ、クマならまだしも、レッドデータの絶滅危惧種となると・・・。
おなじみの種の保存法によると、「国内希少野生動植物種国際希少野生動植物種に指定されているものについては、販売・頒布目的の陳列と、譲渡し等(あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りる)は原則として禁止」とあり、その対象には獣毛も含まれます。
希少動物の獣毛は原則手に入れることができないのですね。
というわけで、いままでに手に入れることができた希少動物はツシマヤマネコジャイアントパンダ(日本産じゃないですね)の2種のみです。
前者のツシマヤマネコは研究目的だと環境省に譲渡申請をして、2か月ほどすったもんだしてやっとのこと手に入れることができました。
ただいま手元にある比較対照標本は40種弱です。日本産の陸棲哺乳類が全部そろうのはいったいいつになることやら・・・。

最後に、今回のお言葉です。
「観察の分野では、機会は備えある人だけに恵む。」パスツール

<いきもの写真館>
ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第67回はカキドオシです。

4〜5月ごろに花が咲く身近な野草で、自分の庭に咲いていてもつるを伸ばして垣根を越えてしまうのでカキドオシ、ですね。花弁にある模様は虫に蜜のありかを知らせる「蜜標」だそうです。

<研究部会からのお知らせ>
 生物技術者連絡会では、2014年2月1日(土)に以下のとおり、FBN総会と総会セミナーを行います。
セミナーについてはどなたでも参加できます。
また、皆様の関係団体やご興味のある方などにも、ぜひ、ご案内下さい、
よろしくお願いします。

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    生物技術者連絡会2014年大会
 第20回FBN総会および第48回セミナーのお知らせ

   「生物多様性に忍び寄る新たな脅威」
ネオニコチノイド系農薬・南方のハナムグリの侵入・ 外来種ニセアカシア
(Japan Field Biologists Network for the study of Nature Environment)
 http://jfbn.hatenablog.com/

●開催日:2014年2月1日(土)
●会 場:一般財団法人自然環境研究センター・東京環境工科専門学校
     7階 会議室(予定)東京都墨田区江東橋3−3−7
     (JR、営団地下鉄半蔵門線 錦糸町駅下車徒歩5分)
      http://www.jwrc.or.jp/
●開催主旨
 私たちの身の回りでは、人知れず起こっている環境の変化や現象があります。
生物や生態系の研究者はそれらをいち早く感知していますが、多くの人は知らずに過ごしています。
また、マスコミや一部の専門家はこれらの現象に気づきつつも、不完全な情報で正確でない解釈をしていることも少なくないようです。
 今回のセミナーでは、現在進行中の自然生態系へ影響を及ぼしている3題の現象について、正確な事実関係や客観的な課題を整理し、3名の演者の方に話題提供をして頂きます。
生物技術者並びにこれから生物技術を学ぶ学生の方々にとっても興味深い内容ですので、ふるってご参加ください。

**************** プログラム **************
12:30〜13:00 総会受付(会員)
13:00〜13:30 第20回総会
13:30〜14:00 セミナー受付(会員、一般)、休憩
14:00〜16:30 第48回セミナー

1.はじめに 

2.講演(1)ネオニコチノイド系農薬の生態系に及ぼす影響について
        バタフライ・ウォッチング協会 代表 市田則孝
   
  講演(2)首都圏に侵出する南方のハナムグリの実態について(仮称)
        日本甲虫学会 自然保護委員長 高桑正敏  

  講演(3)外来生物としてのニセアカシア問題について(仮称)
     一般財団法人自然環境研究センター 主席研究員 小出可能

3.総合討論

4.総括  大野正男 東洋大学名誉教授 生物技術者連絡会会長

16:30  閉会
17:00〜 懇親会(2時間程度)7F会議室

(ご注意:講演の表題や内容、演者については変更する場合があります。)

●参加費:FBN会員500円、一般および学生1,000円
     懇親会出席の方は別途参加費(2,000円)が必要です。
     ※釣り銭なきようお願いします。

●申込み・問合わせ先:生物技術者連絡会 事務局
          (一般財団法人自然環境研究センター内)
           〒130-8606 東京都墨田区江東橋3−3−7
         TEL 03-6659-6332 FAX. 03-6659-5633
          事務局長 斉藤秀生
           E-mail:ssaito@jwrc.or.jp
          生物技術者連絡会公式ホームページ
           http://jfbn.hatenablog.com/

●申込方法
・参加人数を把握するため、事前に参加の申し込みをお願いします。
・メールまたは、所定の申込み用紙(http://jfbn.hatenablog.com/
 からもダウンロードできます)にてFAXで下記事務局までお申し込み下さい。
・メールの場合、以下の項目を記入して下さい。
1)名前  2)所属(会社名) 3)連絡先(住所/電話/FAX/E-mail)
4)会員/会員外/学生 の別  5)懇親会の出欠
・申込み〆切は1月24日(金)です。先着80名定員締切
・参加費及び懇親会費は当日支払いでお願いします。
※なお、釣り銭なきようお願いします。
・当日のFBN入会受付は行っておりませんが、入会申し込み用紙はご用意しておりますので、後日お手続き下さい。(会員の年会費は振り込みでお願いしております)

●会場への交通 http://www.jwrc.or.jp/profile/map.htm
 注意:昨年までと会場が異なっております。

●申し込み及び問合せ先
 生物技術者連絡会 事務局 (一般財団法人自然環境研究センター内)
  〒130-8606東京都墨田区江東橋3丁目3番7号

 <参加申し込みはこちらへ>
  事務局長 斉藤秀生 E-mail:ssaito@jwrc.or.jp
  TEL 03-6659-6332 FAX. 03-6659-5633
  
 <入会・年会費振込に関するご連絡・お問い合わせはこちらへ>
  会計担当 むらい邑井のりこ徳子 E-mail:nmurai @jwrc.or.jp
  TEL. 03-6659-6332 FAX. 03-6659-5633