研究部会メーリングリスト通信 2014年12月号

<動物遺物学の部屋>

第36回 フィールドで動物遺物を見つけよう(1)〜ペリット
 野外(フィールド)を歩いていて見つかる動物遺物には、そのまま持って帰られるものとそうでないものがあります。
後者の代表は足跡やモグラ等の巣穴などの、いわゆるフィールドサインですね。
持って帰られるものとしては糞や獣毛、羽毛などが代表ですが、これらは誰が見ても動物遺物だと分かります。
問題は、一見して動物遺物とは分からないものをどうやって見分けるか、ということですね。
そこで、今回からはフィールドを歩いていると見つかる「これって何?」というものを幾つか不定期にご紹介していきます。

寒い冬のある日、海岸沿いの荒れ地を歩いていると荒れ地の真ん中にポツンと立つ木杭が見えました↓。

よく見ると、杭の下に何かありますね。
拡大してみるとこんな感じ↓。

動物の糞みたいですが、何だか変ですね。
これはコミミズクのペリットです。
それも、吐き出して間もないものです。
ペリットというのは、鳥が口から吐き出す排泄物です。
鳥は歯を持っていませんので、捕らえた餌は基本的に丸呑みします。
そして骨や獣毛などの未消化物を再び口から吐き出します。
これが、猛禽類の食性を知るための重要な手がかりになります。
ただし消化できないものを出すのがペリットなので、見つかるものが全て猛禽類のものという訳ではありませんのでご注意。
猛禽類のペリットは哺乳類の獲物が多いので、一見「毛玉」のようにも見えます。
コミミズクのようなフクロウ類は、ネズミ等の哺乳類を捕らえると本当にそのまま飲み込んでしまいます。
なので、ペリットには頭蓋骨から何から全てひと揃い入ってます。
大きい骨が入ってますので、見た目は表面がゴツゴツした感じです。
よくもまあ、こんなでかいものを吐き出すなあと思います。
対して、同じ猛禽類でもワシタカ類は捕らえた獲物を嘴で切り刻みますから、吐き出されるペリットは丸くて本当に毛玉のようです。
このペリット、経験を積むと形から鳥の種類の見当をつけることが出来るようになります。
このシリーズ、次回のネタはこれです↓。

今日のお言葉です。
「成長を欲するものはまず根を確かにおろさなくてはならぬ。」和辻哲郎

<いきもの写真館>
ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第76回はホンドタヌキです。

真冬に、自動撮影カメラで捉えた姿です。
冬は毛がフサフサしてて、暖かそうですね。

<研究部会からのお知らせ>
ただいま、研究部会報第3号を鋭意編集中です。
発刊は来年の3月末を予定しています。
来年1月31日の総会では、掲載内容を少しご紹介する予定です。