研究部会メーリングリスト通信 2014年11月号

研究部会メーリングリスト通信 2014年11月号

<動物遺物学の部屋>
第34回 動物遺物からどこまで情報を引き出せるか(4)
 獣毛や羽毛、糞といった動物遺物をフィールドで採取したときに、それから動物の情報をどのくらい引き出せるかについての最終回です。
これまでは別の分野で既に応用されているもの、これから実際に使えそうなものを紹介しました。
ここでは、現実にはないものの「こんなアイデアはどう」というやつを二つほど開陳しましょう。
一つめは「毛の色で個体識別が可能かも」という話です。
色合いで個体を識別できるなら毛だけでもできるんじゃないか・・・ということなんですが、毛1本で色の違いを見るなんてどう考えても難しそうですね。
鳥とは違って、獣の毛の色は至ってモノクロ系です。
シカ幼獣の鹿の子模様、イノシシ幼獣の「瓜坊」なんかは美しい色彩に見えますが、よく見ると白から茶色、黒色までの幅の色彩で形作られています。
決して赤や青といった原色が毛に入っているわけではありません。
毛の色を形作っているのは、獣毛の中(皮質)にあるメラニン色素と髄質の空胞構造です。
皮質の中にはメラニン色素胞というのものがあり、色素胞が大きいと毛はより黒くなり、小さいと灰色から白になります。
同じ動物でも黒っぽい個体や白っぽい個体、灰色っぽい個体があるのは、どうも毛に含まれるメラニン色素胞の大きさが関係しているようです。
そして、メラニン色素胞がある程度以上大きくなると、人の目にはもう黒にしか見えなくなるそうです。
それじゃ、ということで「人の目でも違いが分かるくらいまで色素胞を小さくしてやったら毛1本でも色の違いを見分ける、つまり個体識別ができるんじゃないか」というアイデアはどうでしょう。
毛の色素胞を小さくするということは脱色することと同じですから、オキシフルを使えば可能です。
実はこのアイデア、かつて警察の科学捜査研究所で試されたことがあるそうですよ。
有効性があったかどうかは不問にして知りませんが。
もうひとつは「毛で性別はわからないか」という話。
もちろんDNA解析をすれば分かりますが、現場ですぐ分かるような簡易的な方法、例えば何かしらの試薬を垂らすと雌なら発色・・・みたいな方法はないかと。
詳しく調べてはいないのですが、いろいろ文献をあたれば何かありそうな気がします。
もし有用な情報をお持ちの方がいましたら、是非お教えください。

今日のお言葉です。
「鳥は野にあるべし、鳥は野鳥であるべし」中西悟堂

<いきもの写真館>
ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第75回はムラサキシキブです。

秋も深くなると山はすっかり枯葉色になってしまいますが、その景色の中にも鮮やかな色彩のものが幾つか見られます。
前回紹介したオオカメノキやナナカマドの実の赤色はその代表ですけど、こちらも結構目立ちます。
雑木林の藪に生えている、このムラサキシキブの実は鮮やかというよりも品の良い薄い紫色で、何だか宝石のようにも見えてきます。
名前もなかなか素敵です。

<研究部会からのお知らせ>
来年1月31日に恒例のFBN総会が開催されます。
HPでお知らせしておりますので、皆様是非ご参加ください。