生物技術者連絡会通信 2022年3月号
<総合衛生管理業の生物技術③ ~ 虫の同定に必要なスキル>
総合衛生管理業における動物の同定作業は、その目的や必要とされるスキルが自然環境調査での同定作業と大きく違っています。自然環境調査での同定作業はそれが貴重種や重要種なのかを確認することが大きな目的ですから、基本的に種まで同定することが求められます。しかし前者は重要な有害動物を除き、種を同定することまでは求められていません。食品製造等の事業に影響を及ぼす可能性がある動物がいないかを確認する作業なので、行動生態的に似通っているのなら科レベルでグループ分けしただけでも良いのです。総合衛生管理業での主要ユーザーは食品工場ですが、そのような工場は虫が自由に製造場へ出入りできるような構造になっているはずがありません。だから体長が1㎝以上の虫が同定対象になることはなく、それは貴重種や重要種と呼ばれる虫のほとんどが対象にならないことを意味します。そして総合衛生管理業における同定対象の多くが小さな虫であるということは、分類学上での同定分類が進んでいないグループ(ハエ目が代表ですね)が対象となるわけで、実際にも種まで落とすことができない虫ばかりです。
では、総合衛生管理業において必要な虫の同定スキルとはなんでしょう。それは分類の進んでいない動物群を行動生態的にグループ分けできるスキル。そして動物全体を均等に、深く分類できるスキルです。要するに動物分類学の基礎をほぼ完全にマスターするということですね。私が勤めていた会社では、このために同定技術に関する数段階の社内資格を設けて試験を実施、有資格者には給料に差をつけていました。試験はペーパーよりも、実際の標本を使った実地試験を重視したものでした。次回では実際にどのような試験問題が出たか、その実例を紹介しますね。
<いきもの写真館No.132 ザゼンソウ>
ようやく春が近づいてきました。金沢市内やその周辺にはブナも生える自然林や湿地があり、どこも家から車で30分くらいのところにあります。湿地で春真っ先に生える花といえばミズバショウですが、実はそのまた前に先行して出てくる花があります。それがザゼンソウ。聞くところによると、雪に覆われた地中から発熱する花穂で雪を溶かしながらニョキニョキ出てくるとのこと。真っ白な地表に咲く茶色の花…うわー見てみたい。とは思うんですが、残念ながらこちらの雪は積もり方が半端ない。そんな時期に見に行くのというのはけっこう難しいんですね。今年も雪は積もりましたが、このところ暖かい日が続いたのでだいぶ溶けたかな…と出かけてみたところ、ありましたよー。雪の中に咲く花とはいきませんでしたが大きなかたまりで咲いてました。ミズバショウも数株、白い花包をちょっと見せながら伸びてきてました。こちらは半月後くらいが見ごろでしょうか。
※諸般の理由により短縮版となり、更新も遅延しました。お詫びいたします。