生物技術者連絡会通信 2022年4月号

生物技術者連絡会通信 2022年4月号

 

<生物技術者が見た風景 〜 キクザキイチゲ咲く谷>

 4月になるとさすがに北陸でも山の雪は消え、光がいっぱいに当たるようになった地表からは可憐な花たちが次々に咲いてきます。ここは関東とは違い、平野の端からいきなり山岳が立ち上がっているような地形です。なのでそれらの花たちへ気軽に会いに行ける場所というと、実はそんなに多くありません。金沢の市街地から東へ6kmほど、険しい山道を進んだところに直江谷自然公園という場所があります。ここは金沢市が自然林の中に遊歩道を整備している珍しいところで、個人的には大変気に入っています。金沢人には山で森林浴をするという趣味はないようで、いついっても人に会うことはほとんどないのですが。

 4月初めに落葉に深く覆われた山道を、車で恐る恐る通ってその場所に行ってみました。公園とはいえ山岳に作られた遊歩道です。アップダウンの激しさはあまり年寄り向きではありません。フウフウ言いながら尾根道をたどり、鞍部から涸れ沢に向かって少し下ってみます。すると…


 道沿いがキクザキイチゲの花園となっていました。いや、道の真ん中にも咲いてますからまさしく足の踏み場もないほど、ですね。


 この花は湿り気のある腐葉土壌を好むようで、沢状地形の底あたりに集中して群落を形成していました。ここでは4月も中旬を過ぎるとキクザキイチゲの花園はおしまい。続いてはエンレイソウのお花畑へと変わります。

 

<いきもの写真館No.133 キクバオウレン>

 3〜4月は様々な生き物たちが一斉に目を覚ます時期です。最近近場で見かけた生き物たちの特集ということで、このコーナー3題続けてお届けします。


 早春になると野山で真っ先に咲く花、といえば関東ではスミレですよね。しかし、北陸ではスミレよりも早く、雪が残る3月半ば頃から山の斜面に咲き始める花があります。それがこのキクバオウレン。小さな白い花なのでちょっと見では気づかないのですが、よく見たら地表一面にたくさん咲いていたりします。そして目を凝らして花をよく見ると、これがまた結構華やかで何だか得しちゃったような気分になるんですよね。3月も終わりになれば咲き出したスミレと交代して、「また来年ねー」という感じで去っていきます。

 

<いきもの写真館No.134 クロサンショウウオ


 北陸に限らず、日本海側は雪解け水が豊富なためかサンショウウオがとてもたくさん生息しています。それで、里の近くでも見られる身近な種類というと東北ではトウホクサンショウウオになりますが、北陸ではクロサンショウウオです。写真は金沢の市街地から南へ山道を4km弱行ったところにあるもう一つの公園緑地、平栗自然公園で撮ったものです。水中の白い塊のようなものが卵嚢で、真っ白で細いやつが昨晩産んだものですね。それから日が経過するごとにふやけて大きくなり、白色から半透明になります。右端に見えるやつは3日前という感じでしょうか。それと、写真中央やや右に見える落葉の下に注目。よく見たらサンショウウオがこっそり隠れてますよ。産んだあとも数日は水中にとどまっているんだそうで。悪いやつが来ないか見張っているのかしら。

 

<いきもの写真館No.135 ギフチョウ


 平栗自然公園という場所、実はチョウチョ好きの方々には割と有名なところです。ここはギフチョウの多産地としてよく知られているのです。というわけで、写真は今月撮ったもの。しかし現地に行くとあちこちでたくさん飛んでいる個体を見るんですが、動きが素早いうえになかなか止まってくれない。撮るのが難しいですね。1時間粘ってもピントがばっちり合った写真は数枚しか撮れませんでした。ピンぼけですがもう1枚。


 こちらはカタクリの花にとまったやつですが、花の蜜を吸ってる? 平栗自然公園はカタクリの大群落があることでも有名なんですよー。