生物技術者連絡会通信 2022年1月号

生物技術者連絡会通信 2022年1月号

 

<今月のデータ 〜 クロヤマアリは巣からどこまで行く?>

 2006年、仕事の合間に取ってみたデータを一つ。サッカーグラウンド周りの草地を歩いていたところ、クロヤマアリの巣を見つけました。そんじょそこらにいるアリでどうってことのない風景だったんですが、ふと思ったんですよね。働きアリが巣穴から出たり入ったりしてるところを見て、こいつらは巣穴からどこまで遠くへ行ってるんだろうって。餌を見つけたら巣までもって来なきゃならないんで、彼らなりに限界距離ってやつがあるんじゃないかしら…と思ったわけです。そこで、巣穴を中心に、遠くに向かって等距離にピットホールトラップをかけて行って、捕まり方を調べてみることにしました。調べた場所の環境はこんな感じです。

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 巣穴から東西方向に1m間隔でトラップを設置、各方向に5個ずつかけて3日後に回収、捕まったクロヤマアリを数えてみたらこんな結果になりました。

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 棒グラフの縦数字はトラップに捕まったアリの数です。地点表記のF1-5とF1-6の間に巣穴があったんですが、結構きれいなデータになりましたね。1回こっきりしかやってませんので評価できるデータとはお世辞にも言えませんが、巣穴から半径1.5~2mの範囲内で数多く捕まってるから、そのくらいがこの場所での彼らの主な活動範囲ってことでしょうかね? ちなみにトラップにはトビイロケアリも捕まっていて、同じくひと山のパターンになってましたが、その幅はクロヤマアリよりも明らかに狭い感じがしました。いろいろなアリを対象にこれをやってみると面白いかもしれませんね。

  

<総合衛生管理業の生物技術① ~ はじめに>

 私が一昨年まで勤めていた会社の業務内容を区分するとしたら「総合衛生管理業」になります。えっ、それなに?と思った方には「消毒屋」という言い方の方が通りがいいでしょうね。でも消毒屋じゃあ、シロアリやねずみ、ゴキブリの駆除をしているイメージが強くなっちゃいます。今のご時世では消毒屋の業務内容は大きく二分されるようになりまして、今までのイメージのはいわゆる「街の消毒屋」です。これに対して私が勤めていた会社を言葉で表現するとすれば「社会の消毒屋」ということになるでしょうか。会社の主な取引先は一般家庭や役所ではなく企業で、その業務内容は有害動物の駆除対策だけじゃなく、微生物汚染対策や食中毒予防対策といった食品衛生、施設設備の清掃や工事といったメンテナンス衛生、食品安全の指導コンサルタントなど、非常に多岐にわたります。この業界の一部の会社は、2000年前後には自然環境調査業務にも手を出していまして、私なぞは一時それにどっぷりつかっていたために、今でも生物技術者連絡会に所属しています。

 そういうわけで私がいた会社のような大手は、今では消毒屋じゃなく「総合衛生管理商社」と称していて、その業務の中には異物混入対策としての動物調査分析業務というものもあります。その内容は、実は自然環境調査でやっていることとあまり変わりません。トラップ調査で動物を捕まえ、それに捕まった動物や食品に混入した虫などを同定し、調査結果をレポートとして提出することでお金をもらっています。自然環境調査とたぶん一番違うのは市場規模です。最近は食品安全が重要視され、何か事件があるとメディアやSNSに大きく取り上げられる…つまり炎上することが多くなってます。カップ焼きそばへのゴキブリ混入やお土産食品の賞味期限表示違反、乳製品への洗浄剤混入など、記憶している方も多いんじゃないでしょうか。これが原因で会社がつぶれてしまった事例も数知れず。食品業界では「食品安保~フードディフェンス」と称して対策に金をかけるのが生存のために必須とされてます。

 私が思いますに、環境アセス調査が華やかし頃に育ってきた自然環境調査の調査技術は、今では自然環境調査市場の縮小により存続継承の危機にあります。少なくとも、自然環境調査技術だけで飯が食える人は今ではほとんどいないでしょう。動物を調べることが好きでこの世界に入ってきた方々も多いと思いますので、技術の保持や継承を考えるなら総合衛生管理業の業界に幾らかでも移って行って欲しいなあ、といつも考えています。なのでこのブログでは今年、総合衛生管理業における生物技術の利用状況や今後の発展方向について、幾つかご紹介していこうと思います。

 

<いきもの写真館No.130 オナガ

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 筆者は高校までは名古屋にいて、大学に入ってから関東地方に住むようになりました。大学のサークルで野鳥に目覚め、バードウォッチングをするようになって最初に印象に残った鳥がオナガです。何しろ結構きれいな色彩をした大きめな鳥なのに、街の中で団体様で飛んでいるところを生まれて初めて見たもんですから。この鳥、関東地方には多いですが関東を中心とした東日本に分布しているのみで西日本では全く見られません。カラス科の鳥なので頭が良いからか、動きを見ていると実に面白い。野鳥にしてはかなり人慣れしてますしね。写真は水浴びしているところを撮ったものですが、水の中で仰向けになりながら水浴びしちゃってます。こんなにいろいろな格好で水を浴びるなんて、あまり他の鳥はしないんじゃないかしら。

 

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邑井良守 yoshimori.murai@gmail.com