生物技術者連絡会通信 2023年8月

生物技術者連絡会通信 2023年8月号

 

<生物技術者のための名所案内〜中池見 人と自然のふれあいの里

 来年の3月に北陸新幹線敦賀まで延伸します。これで東京から3時間20分ほど、1本で敦賀まで行けるようになったわけです。と、しかし敦賀って何があるの? 有名な観光地があるわけでなし、駅があっても乗り換える客ばっかりになるんじゃないか…という声が金沢にいてもよく聞こえてきます。確かに一般の観光地としてはぱっとしない街ですが、こと生物技術者の皆様にとっては中池見湿地という個人的にとってもお勧めしたい場所があります。前にも一度紹介しましたが、新幹線開通記念ということで、もう一度ご紹介しましょう。

 中池見湿地はラムサール条約に登録されている約25haの湿地で、国定公園内に指定され中池見 人と自然のふれあいの里」という名前で保護管理されています。私がこの場所を推したい一番の理由は駅から歩いていけることです。それも駅から2キロ足らずなので歩いても30分弱。北海道以外でここほど気軽に行ける自然湿地は他に無いんじゃないでしょうか。駅からの道順をGoogle 地図で示すとこんな感じ。

 駅から30分弱、田んぼの中を歩いていくと山際に湿地保護地区の入口が見えてきます。坂道を上がるとトイレがあって、その横にあるのが湿地への登り口です。


 
 写真には案内板も見えますね。拡大するとこんな感じ。

https://www.city.tsuruga.lg.jp/about_city/cityhall-facility/shiyakusho_shisetsu/gaibushisetsu/nakaikemi.files/0003_20230626.pdf

 さあ登りましょう! 湿地までは15分ほどですが約200段の階段を登っていきます。65歳の年寄りにはちょっとキツイ…。階段を登りきると視界が広がり、やがて湿地の南端に到着!

 写真の右端に見えるのはビジターセンターです。写真の左手には展望台がありますので登ってみましょう。

 左下に見える建物は古い農家を移築したものです。この場所にはかつて水田と集落があったので、その原風景を再現したそうで。かつて田んぼだった湿地の山際に沿って遊歩道が通ってます。左回りで歩いてみましょう。

10分ほど歩くと大きな池が見えてきます。

 実はこの中池見湿地、トンボの生息地として有名です。それも観察できる種類数が全国でも指折りに多く、1995年の福井県立博物館報告では約50種、2014年の日本自然保護協会による調査では72種のトンボが見つかっています。私は8月中旬に中池見を訪れた際に、ものすごい数のチョウトンボが池を飛び回っていた光景を見たことがあります。ちなみに、関東首都圏で指折りの生息地といわれる千葉県の乾草沼でも観察されるトンボは30種くらいです。なので、今度開通する北陸新幹線のトンネルが中池見の下を通る計画が明らかになった際には保護運動が大盛りあがりとなり、現在見られるようにルートが少しそれたという経緯があります。日本自然保護協会によると、ここはトンボだけでなくノジコの渡り中継地でもあるそうです。

 この中池見、トンボの他に春には花や鳥、夏にはカエル等の動物を愛でながら1年を通じて気軽に散歩が楽しめます。個人的には遊歩道の道端にある1本のハゼノキの大木が好きです。かつて集落があったときに蝋燭作りに利用していたそうで、想像して妙に感動してしまいました。湿地を巡る遊歩道はゆっくり歩いても1時間強で一周できます。

   

<有害動物の話④~羽アリ>

 真夏になると流石に虫たちも暑いのか、活発に活動する光景を見ることが少なくなります。サマースランプというやつですね。そんな中でも夏の風物詩よろしく、特に夜になると明かりにたくさん集まってくる虫が羽アリです。その数たるや場合によっては壁が真っ黒になるほどの数で押し寄せるものですから、いくら刺したり咬んだりしないといっても不快感は満点、あちこちで苦情が発生します。その典型的なやつがコンビニストアでの苦情ですね。24時間営業なので真夜中になると店舗の明かりが虫たちにとっては目立つこと目立つこと。壁がほぼ全面ガラス張りのこともあって店の周りが羽アリで埋まっちゃうほどの被害が生じます。この時期になると、自動ドアの出入口脇に大型の扇風機を置いて、集まる羽アリが店の中に入らないよう吹き飛ばしている光景があちこちで見られます。

 7月から8月にかけて大発生する羽アリのほとんどはトビイロケアリの羽アリです。トビイロケアリは全国に分布する最も普通に見られるアリで、朽木の中や立木の洞等に巣を作ります。羽化時期には数十万もの羽アリが巣から飛び出すといわれています。羽アリといってもその種類は様々で、実は種類によって出現する時期が違います。多くの種類は夏に出現しますが、早いものでは5月に出現する種類もいますし、寒くなった10〜11月に出現する変わり者もいます。主な種類の出現時期を表にまとめてみました。

 

 様々な種類の羽アリがいることが分かりますが、苦情が出るほどの大量発生を見るのはたいてい春のクロオオアリと夏のトビイロケアリです。この2種は飛び出す数も多いですが、真っ黒で比較的大きなアリなのでとても目立つんですよね。たくさんの数が飛び出すもののその時期は数日程度であっという間に被害は収まり、あとには大量の死骸だけが残ります。

 

<いきもの写真館No.151 キツネノカミソリ


 佐倉にある自宅近く、畦田谷津を早朝に散歩していたら見つけました。ツツジやバラなんかとは違った落ち着いた赤色というんでしょうか、何だか慎み深いようなこの色がいいですね~。夏の終わりのこの時期ではとても目立つ花です。最近、佐倉市がこの畦田谷津周辺を「佐倉里山自然公園」と称することにしたとのことですが、公園らしい施設設備はほぼ皆無。訪れる人も少ない場所です。個人的にはこのままの方がいいんですけどね。

 

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