生物技術者連絡会通信 2023年4月号
<生物技術者が見た風景〜雑木林の林床にキンラン咲く>
筆者は普段は金沢市に住んでいますが、自宅は千葉県佐倉市にありますので月1回程度、自宅に戻ってメンテナンスしています。今月は下旬に5日間ほど帰ることにしたんですが、その理由は家の近所にクマガイソウの自生地があって昨年はまさしくこの時期に咲いていたからです。21日に「ちょっと早いかな」と思いつつワクワクしながら行ってみたら…もう咲き終わり寸前でした。桜も半月くらい早かったけど、今年は何だか全ての季節が早いですね。ちょっとガッカリしながら雑木林に包まれた谷津の中を歩いていると、雑木林の林床でキンランがびっしり咲いているのに気づきました。
そういえばクマガイソウの次がキンランで、こいつの方がちょうど盛りだったんですね。春の雑木林床に広がる新緑のカーペットの中にちりばめられた黄色のアクセントがまたいいですねー。クマガイソウが見れなかったのは残念だけど、これはこれで大収穫と感じた1日でした。
<生物科学者の事件簿~空から鳩の首が落ちてくる>
今を去ること20年くらい前の話ですが、東京都内のとあるビルから奇妙な依頼がありました。「ビルの警備員が毎朝建物の周りを巡回点検してるんだけど、このところほぼ毎日地上にすごいものが落ちてるんだよ。なんだと思う?…鳩の首だよ!鳩の首。一体どこから落ちてくるんだろう。まるで都市伝説みたいだよね。ちょっと調べてくれない?」
ということで現場に行ってみました。場所は東京は大田区内のJR駅前に立地する高層ビルです。都心からは少し離れていて駅前は7階くらいのビルがひしめいていますが、このビルは周りからは際立って高い建物で遠くからもかなり目立ちます。駅前なので地上は全てコンクリートとアスファルトで舗装されています。
実際に拾った鳩の首は処分されていたので、とりあえず建物の周りを歩いてみました。横には18階のビルの壁が垂直にそびえています。首が落ちていた場所に行ってみると舗装面に白い汚れが点々…と、これは鳥の糞ですね。上を見上げると外壁には窓や換気口がくぼんで設けられています。
そのくぼみを見ていたら1箇所、同じくかすかですが白く汚れている場所がありました。明らかに鳥が休息していた跡です。これでわかりました。鳩を獲物とする猛禽類がやってきて、獲物を美味しくいただいた後に首を落としていったのです。鳩の首をちょん切って落とすなんてことをするのはハヤブサに違いありません。しかしここは都会の街中、そこに毎日来るって…
と、後ろを振り返ると街路樹にドバトが鈴なり。その街路樹の下ではおばさんが何かやってます。これは…ハヤブサに狩りやすい餌場を与えてるんじゃないかーい!
この出来事は2004年のことで、当時は首都圏でハヤブサが繁殖しているという情報は確か無かったと思います。それから数年後に、神田の事務所ビルでハヤブサの繁殖が確認されたというニュースが出ました。都会でのトビを除く猛禽類の繁殖はチョウゲンボウが古くから知られていましたが、今やハヤブサもそうです。次は何でしょうか。個人的にはミサゴあたりがありそうかなと思ってるんですが。
<いきもの写真館No.147 エビネ>
クマガイソウは見れなかったんですが、ほぼ同じ環境に自生するエビネを見つけました。園芸植物かと思っている方が多いようですが、野生種もあるんですよ。クマガイソウと同じく盗掘される被害が多いので、花が咲くこの時期は地権者が頻繁に巡回して見守っていました。
<お知らせ>
生物技術者連絡会研究部会ではこのほど、会員向け雑誌の研究部会誌第8号を刊行しました。コロナ事態の影響で第7号から約2年ほど間隔があいてしまいましたが、今後は再び毎年の刊行を目指してまいります。生物技術者連絡会の方々には近日中、ニューズレターとともにお届けします。興味のある方はお知らせください。
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生物技術者連絡会 研究部会 邑井良守 yoshimori.murai@gmail.com