研究部会通信2015年6月号

<動物遺物学の部屋>

第41回 フィールドで動物遺物を見つけよう(5)〜誰が食った?
 
 山を歩いていると足下が悪いので、地表に転がっているものにまで注意を向ける余裕はあまりなくなります。
しかしこれは、普通のスピードで歩かなきゃなんて思うからそうなるんです。
わざと、というくらいゆっくり歩いてみると、足下に転がっているものにも結構目が行くようになります。
秋なんかですと、ドングリなどの木の実がいっぱい転がっています。
シイやナラのドングリは形が良いので、子供の時分は良く拾って遊んでましたよね。
で、秋は動物たちが冬ごもりの前に脂肪をため込まなくてはならず、木の実はその良い餌になります。
よく見ると転がっている木の実の中には、かわいいチビたち?に齧られた跡があるものがあります。
こんなやつです↓

こんな固そうな実を齧れるやつといえば・・・そう、ネズミの仲間たちですね。
ネズミは門歯というノミのような歯を二つ持っていて、金床のような下あごの歯で木の実を固定しながらガリガリと齧っていきます。
なので、齧られた断面をよく見るとノミのような削り跡がはっきり見えたりします。
この門歯の大きさは体の大きさにほぼ比例しますので、見慣れるとどのくらいのネズミが齧ったか見当がついてきたりもします。
こっちの写真は、ピーナッツの食痕です↓

とてもちっちゃなネズミが齧ったみたいですね。
たまに、このような食痕のふちに齧ったやつの獣毛がくっついていることがあって、そうすると齧ったネズミの種類が分かることもあります。
まあ、めったにないことですが。
ところで、最初の写真は世界遺産の小笠原で拾ったタコノキという木の実です。
本土では野外にほとんどいないクマネズミが、小笠原では森の中にいます。
貴重な固有種の陸産貝類(でんでん虫ですね)たちを食べてしまうことで問題になってますが、タコノキのような固有植物の実や種子も食べてしまいます。
それも尋常じゃない勢いで齧りますので、今では島のあちこちでこんな姿になったタコノキの実がみられるようになってしまいました↓

何とかしたいものですね。

今日のお言葉です。
「どうしても原始的な、人をひざまずかせなければやまないような強い力がこの両側の山と、その間にはさまれた谷との上に動いているような気がする。」芥川龍之介 

<いきもの写真館>
 ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第81回はミドリヒョウモンです。

この間、近くの雑木林に行ってみました。
光が差し込む、林の中の道ばたにこのチョウが飛んでいました。
黄色がとても鮮やかでしたよ。

<研究部会からのお知らせ>
 先月お休みしましたので、今月は写真4枚の大盛りです。
そろそろ、今年の研究部会報を発行する予定です。
発行が決まりましたらお知らせします。