研究部会通信2016年3月号

<動物遺物学の部屋>

第47回 フィールドで動物遺物を見つけよう(12)〜木の上にあるのは?
 野山を歩いていると目線より上の周囲を、山の稜線や森の樹々を普通はよく見ますよね。
今まで紹介した動物遺物は足元ばかりにあるものでしたが、もちろん目線より上の方でも見つけることはできます。
木を見るだけでもいろいろなものが見つかります。
ざっと挙げてみると、キツツキの穴やハチの巣、サルが食べて皮だけになった果実、大きなものになると枝をたくさん積み上げて作ったタカの巣などです。
エナガの巣なんかはとても美しくできているので、そのまま持って帰りたくなります。
もちろん繁殖が終わった秋から冬に見つけたら、ですよ。
 木の上にある少し変わった動物遺物、としてまずご紹介したいのは「クマダナ」ですね。
漢字で書くと「熊棚」です。
本州以南に棲むツキノワグマは植物が大好きで木の実や若芽をよく食べます。
動物を狙って襲うなんてことはあまりなく、もちろん人間を襲うこともほとんどありません。
良くニュースで問題になるのは、人にいきなり出会ってパニックになったか、空腹で背に腹は代えられない状態になったといった、普通じゃない状態のクマだったからです。
ドングリがなる木が多い森では、クマは木に登って木の実や若芽を食べますが、大きな体ゆえにその食べ方は豪快そのものです。
木に登ったクマは太い枝を選んでどっこいしょと座り、腕が伸びる範囲の枝をすべてむしり集めてむしゃむしゃ食べます。
実や若芽を食べ終わった枝葉はポイと捨てる・・・ことはせずに、自分のお尻の下に突っ込んでいきます。
きっと、座布団みたいになって快適なんでしょうね。
これをクマダナというのです。
木に枝葉が引っかかっているだけなので、これをフィールドで見つけたらツキノワグマが最近ここにいたという証拠になります。
木に登った際に爪痕がつきますので、その形状から今朝だったか昨日以前だったかというあたりまで経験を積めば見当がつくようになります。
ということで、爪あと生々しい木にクマダナを見つけたらすぐ近くにクマがいるかもしれません。熊鈴を忘れずに。
クマダナが写っているいい写真が見つからなかったので、幹に残された爪あと写真ですいません。
なかなか迫力ありますよね。

今日のお言葉です。
「人間は腦味噌を搾つて、やつと効率が百分の二にも足りない電燈を発明している。
ところが動物は幾十万年の昔から、何の造作もなく効率百に近い光を平気で点じている。
ここに至つて『萬物の霊長』は全く顏色ない訳だ。」神田左京

<いきもの写真館>
 ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを写真で紹介しています。
第89回はトキソウです。

 春になると湿地に咲く花で、ランの仲間です。
とても可愛らしい花を咲かせるため、盗掘されて数を減らしています。
千葉県成東市では湿地が保護地になってて、今でも見られますね。
写真プリントのキャプチャーなので、少し画質が悪くてすいません。

<研究部会からのお知らせ>
特にありません。