研究部会通信2015年8月号

<動物遺物学の部屋>

第42回 フィールドで動物遺物を見つけよう(7)〜森のネズミは穴を掘らない?
 
 前回からの続きです。
さて、ネズミの穴とモグラの穴はどう違うんでしょう?
モグラは漢字で「土龍」と書くとおり土の中に棲んでますから、もちろん穴を掘ります。
簡単に穴を掘れるように、手(前足)がシャベルみたいになってます。
ですが、彼らの巣や道は地面より深い場所に作られていて、地表面からはその穴は見えません。
それじゃ、これは何?↓

これは餌をとるために地表面付近まで出て、ミミズを探して這いずり回っている跡(坑道)なのです。
この「ミミズ腫れ」みたいな跡に沿って、こんな感じで幾つかポッカリ穴が空いてます。

よくこれをネズミの穴と間違える人がいますが、それじゃ本当のネズミの穴はどんな形なんでしょう。
残念ながらドブネズミやクマネズミといった街のネズミは穴を掘りますが、アカネズミやヒメネズミといった森のネズミたちは穴を掘りません。
なので、森を歩いていて土に穴が開いていても、それはネズミが掘ったものではありません。
他の動物が掘った穴や木の根の隙間等を利用しているだけです。
アカネズミは、例えば朽木を持ち上げてみると、その下に巣を作っていたりします。
ドブネズミは、こんなふうにしっかりした穴を掘りますが、森じゃなくて街の緑地等で見られますね。

ということで、森の地面で見られる穴はネズミの穴じゃない、と憶えておきましょう。
森じゃなくて草原ではネズミの掘った穴が見られますのでご注意。
草原や田畑に棲むハタネズミの仲間(ヤチネズミ類)が掘った穴です。
モグラほど深い穴は掘りませんが、地面の表面近くにモグラの坑道に似た穴を掘ります。
見分けるのはちょっと難しいです。
地面以外の崖や木の幹なんかで見られる穴については次回に。

今日のお言葉です。
「北の国も真夏のころは花よめのようなよそおいをこらして、大地は喜びに満ち、小川は走り、牧場の花はまっすぐに延び、小鳥は歌いさえずります。」アウグスト・ストロンベ

<いきもの写真館>
 ここでは、私たちの身近にいるいきものたちを紹介しています。
第83回はクズです。
夏になると道ばたやフェンス、石垣などに蔓を伸ばして表面を覆い尽くしてしまう、あの厄介者のクズです。
ですが、夏に咲かせる花はけっこう美しいんですよ。
店で売っている花じゃないかと思うくらい。
 ※訂正 この記事に8月30日付で添付した写真はクズではなくカラスウリの花でした。
  お詫びして訂正します。   

<研究部会からのお知らせ>
 今年の研究部会報、編集作業が遅れてます。
もう少し待ってね。