生物技術者連絡会通信 2023年2月号

生物技術者連絡会通信 2023年2月号

 

<生物技術者が見た風景〜ハクセキレイ、ピラミッドをつくる>

 私が消毒屋だったころに目撃した出来事です。とある会社から、事務所の天井から枯草のようなゴミが毎日落ちてくるけど何だろう?…。という問い合わせが来まして、現場に行ってきました。それで、事務所天井の点検口から天井裏をのぞいて見た光景が下の写真です。

 

 ???何だこれ…と、最初は分からなかったんですが屋外に回って写真に見える右側の壁向こう、建物外壁上の庇(ひさし)部分を見ているとお馴染みの鳥が壁の隙間を通って天井裏に入っていくのを確認。その鳥がこいつ…


 ハクセキレイでした。この鳥が毎年同じ場所に巣材を積み上げて営巣するのは知ってましたが、積み上げてもせいぜい10㎝くらいの高さしか見たことがありません。しかしこれは1m近い高さですそ野も広く、まるでピラミッドか富士山です。ここまで積み上げるのに一体何年かかったんでしょうか。調べてみるとハクセキレイのような小鳥の寿命は、野生では3~4年程度ではないかとのこと。そんな短い期間でこんなにまで積み上がるもんなの?。ここまで行くには5年以上はかかるんじゃないかなあ…と思ってしまいました。

 工場や倉庫等で使われるプレハブ構造の建物や換気口や配管、空調等といった設備があるため外壁や屋上に凹凸が多いビルでは、スズメやムクドリよりもハクセキレイに営巣される事例が最近目立っています。例えば食品を製造する工場のような施設だったら周りに採餌できる場所がたくさんあるでしょうから、野生とはいえ飼育下での環境のように7~10年の寿命も不可能ではないのかもしれません。ちなみにセグロセキレイキセキレイも人工物に営巣する例は知られていて、駐車場に止めていた車のエンジン部分に営巣された事例もあるらしいです。 

 

<今月のデータ~ピットホールトラップで見るアリ相 その4>

 様々な環境や場所でやったピットホールトラップ捕獲結果からアリ相のみを抜き出したデータのご紹介第4回です。実施したピットホールトラップ調査の仕様は以下の通り。

 

・誘引餌は「すしのこ」を使用。「すしのこ」は食料品店ならどこでも売っているタマノイ酢株式会社製の粉末醸造酢です。一袋150円くらい。

・設置時間は基本的に48時間(調査期日でいうと3日間)、調査初日の午前中に設置して調査3日目の午前中に回収というスケジュールです。

・設置個数は1地点あたり10個。回収時に紛失があった場合は、回収できたトラップの総捕獲数を10個あたりの値に補正します。

・捕獲数がものすごく多かったのでトラップ1個単位では5頭未満なら5頭、6~10頭なら10頭、11~50頭なら50頭、51~100頭なら100頭というように段階別にカウント、100頭以上では目視判断で100頭単位でカウントし、最終的に10個のカウント数を集計しました。


 千葉市内で実施した異なる環境の人工緑地2か所でのデータです。よく整備された疎林状の緑地上とそれに隣接する未整備の竹林内で実施した結果をまとめて一つの表にしました。トラップを設置した場所はどちらも地表面に10個を1mおきに直列で配置しました。アリ相のデータ紹介は今回で一段落。またネタ不足の時期になったらご紹介しますね。

 

<いきもの写真館No.145 カワガラス


 12月から2月までの金沢の冬は連日雨か雪で、1日晴れる日なんて月に2日あるかないかといった感じです。ようやく訪れた晴れの日に自宅から15分歩いて犀川の川べりを歩いていたらカワガラスに出会いました。犀川は金沢の街のど真ん中を流れていますが、時期になるとアユ釣りの釣り人が見られるくらい魚も底生生物も豊かな川です。冬は雪深い上流から平野部に降りてきているんでしょうね。しかし、じっくり見ていたら堰の裏側に飛んで入っていくのを観察。これはひょっとして…定期的に見に来るポイントがまたできてしまいました。