研究部会メーリングリスト通信 2019年1月号

研究部会メーリングリスト通信 2019年1月号

 

研究部会からのお知らせ

 2016年よりブログへの投稿を中断していたFBN会員向けのメーリングリスト通信をリニューアルして投稿再開します。以前と同じく、今後毎月投稿して参ります。

<今月のデータ ~ 東京のカラスは何羽産む? 3.2羽でした>

 このコーナーでは、酒の席くらいでしか出てきそうもない生きものに関するささやかな疑問を、わりとまじめに調べてみたデータでお答えしています。とはいえ、研究というほどでもないのでどこかに引用できるシロモノではございません。やはり、酒の席でのものしりネタとしてご利用ください。ということで、今回はカラスです。

 東京の街にはカラスが多い。いや、東京に限らず大きな都市ならどこでも多いですよね。1990年代には東京都区内に生息するカラスは約3万羽にのぼり、あちこちで生ゴミが荒らされる、歩行者が襲われる、ビル屋上の機械が傷つけられるといったことが頻発していたものです。今ではそれほどのことはなくなりましたが、その理由の一つとして2000年あたりから数年に渡り、当時の都知事が音頭を取って大掛かりなカラス対策をとったことがあります。個人的にはそのせいだけではないような気がしますが、対策の結果これだけ被害が減りましたよと東京都が誇らしげに掲載しているデータがありますのでひとつご覧ください。 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/animals_plants/crow/jyokyo.html

 この対策では数百個の捕獲箱を設置して捕獲しています。ピーク時には年に2万羽に迫る勢いです。このくらいまで捕獲すれば、きっとヒナを産んでも追いつかない状態になって減った…とまあ、考えたいところです。でも、カラスは七つの子を産むんじゃなかったっけ?

 次のグラフをご覧ください。東京都区内で見つかったカラス(ほぼ全てハシブトガラスです)の巣を80個ばかりのぞきこんで、巣にヒナが何羽いたか調べた結果です。

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都会のカラスは何羽産む?

 1巣でのヒナ数(ハッチ数)は平均で3.2羽。図鑑とかでは3~6羽になっているんですが、案外少ないですね。これじゃ、減るのも不思議じゃない? それでは計算してみましょう。ピーク時の3万羽で雌雄1:1として都内にできる巣は15000…な訳ないですね。ある人から聞いた話によると、東京都内に棲むカラスのうち、「住宅事情」等の理由により繁殖に参加できるのはせいぜい2割ぐらい…とのことでしたから、まあ3000くらいはあるかな。つまり、毎年巣の数×3.2の9600羽が新たに参加してきます。一方、平成15年から23年までの10年間では年平均で15000羽くらい捕ってましたから、新参加の個体数以上には捕っていたことに。すると、計算上は5年くらいで30000羽からゼロになるはず…なんですが、残念ながらそうなっていません。どうも捕獲箱だけで「捕りきる」のは、やっぱり難しいみたいですね。おそらく、東京が空いてくると「住宅事情」が良くなって2割以上の数が繁殖に参加してくるのでしょう。本来は3000件(巣)の物件があるということでしょうから。それに、餌が豊富な「黄金郷」に向かって田舎者も飛んでくるでしょうし。ちなみに野外でもカラスは10年以上生きるうえに、3歳くらいから繁殖できます。すると、10年生きるとしても7年×3.2羽ということで生涯に22羽はヒナを産むことになります。

 カラスのためにこんな壮大な駆除対策を行った事例は、世界的に見てもそうはないと思います。なので、このネタはこれからも幾つか続けましょう。気が向いたときに。

 

<生物技術者の事典 ~ 狩猟免許>

「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(通称は鳥獣保護法)に基づく国家資格。2018年現在、狩猟免許は網猟、わな猟、第一種銃猟、第二種銃猟の4種類に分けられている。かつては「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」と呼ばれていたが、生業としての狩猟の消滅、鳥獣害の増加等といった時代の変化に沿って、2002年に大幅改正された。年に数回実施される資格試験に合格すれば都道府県から免許が交付されるが、それだけでは実際に狩猟することはできない。毎年、都道府県に登録申請を行い、登録証と記章をもらう必要がある。また、一定の狩猟期間に決められた猟区でのみ狩猟が可能。イノシシ等の有害鳥獣を駆除する場合は、自治体が策定した鳥獣保護管理計画等に基づく認可となり期間や猟区が別途認められる。この場合でも実施責任者に対し狩猟免許の保持が求められる。

ブラックバス等の特定外来生物鳥獣保護法ではなく「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(通称は外来生物法)によって駆除等が認可される。したがって特定外来生物を駆除する際に必ず狩猟免許がいるというわけではないが、アライグマやカミツキガメ等の駆除作業では狩猟免許の保持を求められることがある。

 

生物技術者のひとりごと:

 狩猟免許が網とわなに分かれたのは、鳥獣害に困っている農家さん達にもとりやすいようにするためと聞いています。環境省HPから拝借した次の表を見てもらうと分かりますが、狩猟免許の所持者は1975年から2000年までにほぼ半減し、それ以降あまり減少していません。

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狩猟免許者統計

 それなりに効果があったみたいですね。一度、わな猟免許の試験を受けたことがありますが、当時中年の私でも簡単にとれましたよ。ただし、受験前に狩猟組合が開催する講習というのを受けての話で、これで3万円とられました。この講習で試験問題やら実習内容やらがネタバレされるので簡単なのですね。ちゃんと日本の仕組みでした。しかし、特定外来生物と有害鳥獣を現場で区別するって…。

 

<いきもの写真館No.94~オオバン

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オオバン

 真っ黒な体に額と嘴だけが真っ白というシックな色合いが好きで、見つけると何故か何枚も写真を撮ってしまう。ラッパのような声もまた好し。かつてオオバンは、関東ではてっきり冬鳥の代表で冬でないと見られないと思っていた。実際には北方から冬に多数が渡来して越冬するが、一年中公園の池にいる少数派も結構多い。夏は茂った水草の中に隠れているので、いるかいないか分からず冬鳥と思っていたのかもしれない。カモの仲間のように見えるがツルの仲間で、足に水かきはなく指がマメ科植物の莢(さや)みたいな形になっている。

<今月のお知らせ>

 ※過去のイベント紹介のため省略します。

 

この通信の内容に関する問い合わせは以下にお願いします。

〒921-8033 石川県金沢市寺町1丁目19-19

yoshimori.murai@gmail.com

邑井 良守

※昨年1月より、標記の住所に転居しております。