研究部会メーリングリスト通信 2019年3月号 

研究部会メーリングリスト通信 2019年3月号 

 今月のデータ 〜 ハシブトガラスの住宅事情 

 今年の1月号にカラスのヒナ数について紹介しましたが、今度は住宅事情です。都会ではカラスはどこに、どんな材料を使って巣を作っているんでしょう? 東京都の首都圏地域で調べてみました。 

首都圏で見られるカラスはほとんどがハシブトガラスです。英名はjangle crowで、本来は暗くうっそうとした森の中に巣をかけます。120個ばかりの巣を調べた結果を図にしてみました。 

 

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カラスは何の木に巣をかける?

 冬でもたくさんの葉が茂り、枝の中が薄暗くなるような木が好きみたいですね。樹高が高いのもポイントかな。では、何を使って巣を作るんでしょう。こちらの結果も図にしました。 

 

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 ハンガーや針金が圧倒的に大人気です。抱卵してて痛くないのかと思ったら、卵を産む場所にはちゃんとビニールひもや麻布といった柔らかいものが敷いてありました。針金でガッチリ固めてあるので、強い風が吹いても木をゆらされてもびくともしません。人が襲われないように街路樹の巣を撤去しようとしても、なかなか外すことができず苦労します。頭いいですねー。でも、どの巣にもハンガー使ってありましたがどこから持ってくるんでしょう? 

 

<生物技術者の事典 〜 ネオニコチノイド 

 1993年に日本特殊農薬製造(現 バイエルクロップサイエンス)が開発した殺虫剤イミダクロプリドを嚆矢とする殺虫剤系統。ニコチンに類似する神経伝達の阻害特性から、類縁構造を持つ殺虫剤を含めて「ネオニコチノイド系殺虫剤」と呼ばれるようになった。 

 現在、日本で農薬登録されているネオニコチノイド系殺虫剤は7剤あり、そのうち6剤は日本で開発されたものである。代表的な薬剤はイミダクロプリド、フィプロニル、ジノテフラン等。水溶性で植物体に浸透し残効性もあるため、田植え前の育苗に処理することで水田への薬剤散布量を軽減することができる。また、家庭用のゴキブリ駆除剤としても市販されている。 

 1990年代後半から世界的に使用量が増加したが、同時期にEU域内でミツバチの大量死が報告されるようになり、2006年には女王バチと幼虫を残して働きバチが巣箱から突然いなくなる現象(CCD)も出現した。これらの原因がネオニコチノイド系農薬であるとする説が注目されるようになった。このためEUと米国ではネオニコチノイド系農薬の使用制限を実施している。現在ではCCDの発生原因は農薬だけでなく、それを含めた複数の要因が関与しているとする説が有力である。 

 

生物技術者のひとりごと: 

 消毒会社に勤めていますが、殺虫剤などない方がいいと思っています。だって、虫を殺せる毒ですよ。哺乳類にも影響ないわけがないし、それに直接触れなくてはならない立場なんですから。 

まあ、扱う以上は一般の方々よりも詳しい知識や資格を持ってますし、中毒になっていないか定期的に調べることも義務化されているので、こいつを安全に扱える自信は持っていますが。 

この問題で一番訝しく思うのは「何でネオニコチノイドだけを悪者にしたいの?」ということですね。一番新しい薬剤だから?ニコチンの仲間なのでタバコのイメージとダブるから?いやいや、きっと一番の理由は「EUアメリカが騒いでいるから」じゃないかと思いますね。日本発の殺虫剤なので、ある種の「恥ずかしさ」もあるのかしら。 

今ではミツバチの大量死はともかく、CCDとこの薬剤との因果関係はそれほどないことがほぼ定説化しつつあります。日本生活協同組合連合会から、この問題に関する見解が分かりやすく示された文書が公開されていますのでご一読ください。 

https://jccu.coop/food-safety/qa/pdf/qa03_04_04.pdf 

個人的にはネオニコチノイド系農薬への攻撃が、かえって従来の農薬(有機りん系、ピレスロイド系など)に「免罪符」を与える結果になりかねないんじゃないかと心配しています。あらゆる化学薬剤なしで悪い虫を退散させる方法があれば、それが一番いいんですよね。 

 

生物技術者が見た風景  フクロウ 

 1997年に環境影響評価法(通称環境アセスメント法)という法律ができました。この法律に基づく考え方に沿った自然環境調査が大規模開発事業に要求されるようになり、初めての経験だった当時の建設コンサルさん達はたいへん困りました。それで、この法律に関連して(一財)自然環境研究センターから「自然環境アセスメント技術マニュアル」なるものが発刊されたのですが、その中に里山の生態系を代表する上位的、典型的な動物の例としてフクロウが挙げられています。あくまで「例」だったのですが、調査を受注した会社さん達はこれ幸いと、フクロウを調査の対象動物としたのでした。 

という成り行きで2001年にフクロウの調査に参加したのですが、調査時の聞き込みで現地の方がいうには「春になると森の木の上からフクロウのヒナが落ちてくる。」…。いや、落ちてくるって何よ。ここの人は冗談きついなあ、と思ってました。ところが、ある朝に社寺林の中に行ってみると写真のように暗い林の中に何やら白いものがボーッと…。 

 

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森の中に白いものが…

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この子でした…

 幽霊?ではなくて妖精?でもなくてフクロウの幼鳥でした。とってもおとなしかったので、標準レンズで写してみました。あっけにとられた私たちを尻目に、妙に大きな足で太いスギの幹をガッシガッシと掴み、垂直の幹を登っていきましたとさ…後で調べて分かったんですが、フクロウのヒナは巣立ち前の飛べない状態でもよく巣の外に出てしまって、歩き回るヒナを親が追っかけて餌を与えてることが多いそうです。 

本当に落ちてくるんだ…。 

  

<今月のお知らせ> 

過去のイベント紹介のため省略します。 

 

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〒921-8033 石川県金沢市寺町1丁目19-19 

yoshimori.murai@gmail.com 

邑井 良守 

※昨年1月より、標記の住所に転居しております。