研究部会メーリングリスト通信 2019年10月号

研究部会メーリングリスト通信 2019年10月号

<生物技術者の事典  〜 トレイルカメラ>

 赤外線センサーを備え、防水対策を施した屋外調査用のカメラの通称。このカメラを仕掛けて生息する哺乳類を確認する手法は、今ではすっかり野外の哺乳類調査に欠かせないアイテムになっている。カメラと赤外線センサーを組み合わせて通過する動物を待機撮影するという手法はフィルム式カメラの時代からあったが、当時デジタルカメラではバッテリーがもたないという致命的な問題があり、2010年代を迎えるまではほぼ趣味的、専門的な世界にとどまっていた。2010年代初めからリチウムバッテリーとLEDフラッシュが普及することで問題が解決され、この方式のカメラが安く出回ってきたことによってようやく正式な調査手法として認知されるようになった。今のところこの種のカメラを製造する国内メーカーはなく、米国メーカーによる中国製造品が主流である。

 

生物技術者の独り言:このカメラは2008年から調査に取り入れていますが、初めのころはフィルムカメラに赤外線センサーを取り付けて改造した「自動撮影カメラ」を使っていました。某消毒会社のメカニック部門に作ってもらった見た目も結構なカメラでしたが、フィルムを現像するまで結果が分からない、頻繁に電池を取り換えなければならない、全天候型への改造費が高い等でかなり苦労した覚えがあります。つくづく、フラッシュに使う青色LEDリチウムイオン電池の出現は偉大だったのですね。ノーベル賞も当然でしょう。

 

<生物技術者が見た風景 〜 潮騒の棚田>

 写真は、もうかれこれ10年も通い続けている場所です。海から立ち上がった斜面に作られた小さな棚田で、新潟県の久比岐自転車道で自転車をこいでいると出会えます。初めてこの風景を見たとき、何だか一幅の絵画を見ているような感じになりました。でも、この絵画は季節によって変わっていくんですよね。この田んぼの脇にはサイクリストが休憩できる東屋があって、写真はその東屋から見たもの。田植え前、稲刈り直前と表情は変われどバックグラウンドにはざわざわと絶え間なく波の音が…。春にはスミレ、夏はツリガネニンジン、秋はツリフネソウといろいろな花も咲き、空には海鳥も舞うという。いやもう最高ですよ。ここへは最低でも1時間は歩くか、自転車をこいでくる必要がありますがお勧めです。

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田植え直前の棚田

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稲刈り直前の棚田

 

<いきもの写真館No.101 ホンドテン>

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ここ、通れるのかな?

 写真は山梨県での調査のとき、トレイルカメラのところで紹介した「自動撮影カメラ」で撮影したホンドテンです。フェンスをくぐって入ろうとするところを見事に捉えてます。ホンドテンのようなイタチ科動物は動きが早く、今のトレイルカメラでもしっぽだけ等の撮影に終わることがけっこう多いですね。このときはホンドテンだけじゃなくタヌキや鳥も撮れていました。現像した写真帳を開けて、思わず歓声を上げてしまった記憶があります。今じゃ、そんなドキドキ感が得られる機会が無くなったことが少し寂しいですね。

 

 

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邑井 良守