研究部会メーリングリスト通信 2019年11月号

研究部会メーリングリスト通信 2019年11月号

 

<生物技術者の事典  〜 SDGs

 2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成された国際目標。2016年から2030年にかけての目標と位置づけられている。この中では14番目「海洋資源」と15番目「陸上資源」が、生物技術者に関連する項目になる。その詳細目標にあたるターゲットには次のようなものがある。

 14.2「海洋、沿岸の生態系を回復させる」

 14.5「沿岸域および海域の10パーセントを保全する」

 15.1「陸域、内陸淡水生態系およびそのサービスの保全・回復・持続可能な利用を確保する」

 15.4「生物多様性を含む山地生態系を保全する」

 15.5「絶滅危惧種の保護と絶滅防止のための対策を講じる」

 15.8「外来種対策を導入し、生態系への影響を減らす」

 環境省は、これらの目標に対してPDCAサイクルによる取り組みを行うことを勧めている。PDCAサイクルは取り組み手順を計画(Plan)、検討と実施(Do)、確認と評価(Check)、見直し(Act)の段階に分け、これをサイクルとして回していく考え方である。

 

生物技術者の独り言: エスディージーズ。最近やたらにこの言葉を聞きませんか?企業から自治体、学校機関に至るまで「SDGsに取り組む」とかいってますが、一体何のことやら。そこで調べてみたわけですが、まあ言っていることは今までにでてきた問題点をひとまとめにして持続可能な世界を実現というスローガンにあわせました、という感じでしょうか。これの普及活動としてきっと結構な予算がついたのでしょうね。むかし、「ビオトープ」という言葉のもとに企業や自治体が音頭をとり住民レベルでも大いに盛り上がったものですが、その再来になるのかしら。でもビオトープよりさらにこちらはイメージがでかすぎるので無理かな。

しかし、PDCAサイクルって民間企業で働いているとけっこう良く聞く言葉ですけど、まさかここに出てくるとは。

 

<今月のデータ 〜 モグラ穴を調べてみた>

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芝地の中にモグラ

 むかし、河川の堤防にモグラ穴があるのを見た人が「モグラが開けた穴で堤防が弱くなってない?」とか言い出して、お金を湯水のように使えた国土交通省さんが大々的に調査したことがありました。その流れにのり、とある川の堤防法面で調査したときの話です。なお、写真は調査地とは別の場所で撮ったものです。

アズマモグラが生息する国の一級河川堤防法面を対象に「一定面積当たりの坑道密度」と「発泡ウレタン材による坑道の形状測定」の二つの調査をしました。坑道の測定については、今ならモグラに発信機をつけたり、坑道内にファイバースコープを突っ込んだりして正確に調べられると思いますが、当時はそのような手段はありませんでした。5×5mの調査区画を右岸側5ヶ所、左岸側2ヶ所の合計5ヶ所に設定して実施し、目視確認で確認できる坑道(つまりモグラ塚)を数えたものです。その結果、最も多く確認できた地点で34、少ない地点で3という数値が得られています。次に試し掘りして本道を露出させ、発泡ウレタンを注入することにより下部水平坑道の分布形状を調ました。2か所調査して、長い方では距離にして6.3m、坑道の平均内径は4.5~9.0㎝(長径)×3.5~5.5㎝(短径)でした。露出させた本道は地表より11~23㎝の深さにありました。6.3mが長いか短いかということですが、文献をあたると坑道の総延長距離は100mを超えるものがあるそうです。発泡ウレタン材は注入できる量に限りがありますので、最大限注入してこのくらいまで届くと解釈した方がよさそうです。

それで、肝心のモグラが開けた穴で堤防が弱くなってないかという点ですが、堤防の堤体を構成する土は内部が固く緻密で、法面表面の1mくらいが草が生えるくらいの密度(当然ミミズ等も棲める)になっているそうです。まあ、堤ですから当然ですよね。なので、モグラの餌もその表面にしかおらず堤体の底深くまでモグラが行くことはないでしょう。堤防の能力に影響を与えるほどにはならないのではないでしょうか。

 

<いきもの写真館No.102 モズ>

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電線でキーキーと盛んに鳴いていました

 秋も深まってきますと、里にこの鳥の鳴き声が良く響いてきます。良い声、とはお世辞にも言えないですが遠くまで良く通る声ですよね。おまけに電線の上や木のてっぺんで良く鳴くものですから、歩いているといやでも目に入ってきます。尾をくるくる回す仕草でシルエットでも識別は容易ですし。写真は近所で散歩してたときに撮影したものです。

 

 

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邑井 良守